みずほ証券は、金融シミュレーションの計算基盤として、液冷データセンターを新たに構築し、直接液冷方式のサーバー「HPE Cray XD2000」を採用する。両社によると、国内金融業界では初の導入という。10月6日、みずほ証券と日本ヒューレット・パッカード(HPE)が共同で発表した。今秋から液冷設備やシステムの構築、稼働評価を進め、2027年4月以降に本番稼働する予定だ。1日あたり3.6億件を超える金融シミュレーションの計算需要に対応する。
みずほ証券のグローバルマーケッツ部門は、国内外の機関投資家や金融法人に、公社債、株式、デリバティブなどの金融商品・サービスを提供している。みずほ証券の2025年度の純営業収益は9193億円で過去最高となり、純利益は前年度比31%増の1930億円だった。部門のクオンツチームは、デリバティブの現在価値や市場リスク、信用リスクを計算するシミュレーションで、トレーダーの意思決定を支える。1日あたりの計算件数は3.6億件を超え、より付加価値の高い商品・サービスを提供するには、システム資源の強化と大規模化が必要だった。
金融市場部、グローバルIT統括部、ITサービス・プラットフォーム部が協力し、2024年10月に新システムの検討を始めた。CPUの性能向上とともに発熱の問題が深刻になり、高い性能を維持し続ける必要があるシミュレーションでは、空冷方式の限界が見え始めていた。2026年6月にデータセンターと液冷システムの構築プロジェクトが始まり、基本方針として液冷システムの採用が示された。さまざまな方式の液冷システムを、冷却性能や、計算性能と安定稼働の両立、データセンターの設備や運用のしやすさ、コストと投資対効果で比較した。単純な空冷か液冷か、オンプレミスかクラウドかではなく、今後の事業にどれだけ貢献できるかを重視した。
選択したHPE Cray XD2000は、サーバーのCPUを冷却板で直接冷やす直接液冷(DLC)方式で、1Uの筐体に4つのサーバーノードを集約する高密度型システムだ。同社の構成は、1ノードに2CPUの96コアと1.5TBのメモリを載せる。電力あたりの冷却性能は空冷方式を20%上回る。冷却効率が高く、より高性能のCPUを安心して選べ、ノードあたりの性能は現行の1.6倍になる見込みだ。評価したのは、サーバー、液冷システム、監視ツールに加え、構築サービス、コールセンター、保守までHPEが一貫して提供できる点だ。液冷は同社にとって初めての取り組みで、ワンストップで支援を受けられる安心感も大きかった。HPEの専用工場でDLCやCDU(冷却液分配装置)を含めて構成と試験を行い、ラックに収めた状態で出荷するため、データセンターでの作業は最小限で済む。
計画では、2026年9月にハードウェアを搬入し、10月から液冷システムの動作確認を始める。11月に負荷試験とOSの構築を終えて環境を完成させ、2027年1月までに性能評価を行う。業務での本番稼働は2027年4月以降の予定で、第1期は8ノードから始め、効果を確認しながらサーバーとラックを増やす。運用面では、HPEの監視ツールが液冷システムと電源システムの状態をリアルタイムで可視化し、冷却液の漏れなどを検知すると自動で通報する。電力使用効率は、空冷方式のデータセンターのPUE(データセンター全体の電力効率の指標)が1.5程度なのに対し、新しい液冷環境では、設備単位のpPUEで1.1以下を目指す。電力コストを中心にインフラ運用のコストを抑える狙いもある。
このシステムでDLCの有効性を実証し、計画中のGPUサーバーにも、同じ液冷方式を採用する考えだ。金融市場本部金融市場部の赤羽崇副部長は「今回のシステム導入は、目の前の計算資源の増強だけでなく、数年先を見据えたシステムアーキテクチャーとして、DLC搭載サーバーを選んだことに意味がある。運用を通じてDLCの有効性を実証し、計画中のGPUサーバーにも同じ液冷方式を採用していく」と話している。