ビジネスITのユーザー事例専門メディアとして立ち上げた『CaseHUB.News』が、9月9日、創刊(Webメディアですがあえてそう表現します)1周年を迎えました。読者、取材に協力いただいた方々をはじめ、メディア運営に協力してくださった皆様に改めてお礼を申し上げます。ありがとうございます。
編集記事の掲載数は、9月8日、1300本に到達しました。同日現在の記事の種別としては、日々の新着事例情報を伝える「ニュース」が1261本と最も多く、独自取材を中心にITユーザーの課題解決ストーリーを掘り下げる読み物記事「インサイト」は38本でした。直近ではITユーザー側の「人物」にフォーカスした「インタビュー」の掲載もスタートしました。そしてこの記事は「コラム」カテゴリの記念すべき1本目です。
CaseHUB.Newsは、ユーザーの規模、業種、業務、課題、IT製品/ソリューションなどのさまざまな軸でこれらの記事を探せるUIを備えています。なぜこれを重視しているかというと、主に二つの理由があります。一つは、事例記事は単にタイムライン上で消費されるだけではないロングテールのコンテンツであり、読者の情報ニーズに応じてそれらを探しやすくすることで、メディア体験や記事の価値を高められると考えているからです。
そしてもう一つの理由は、読者にとって参考になるIT活用の取り組みをベンダー横断で比較できるなど、こうした機能が記事情報の価値をさまざまな角度から相対化するのに役立つからです。読者にとってはこの「相対化」こそが情報のリアリティにつながるのではないでしょうか。言うまでもなく、テクノロジー活用の現場は試行錯誤の連続です。市場や社会とのコンセンサスを欠き、ベンダーの論理で絶対化されたコンセプトやストーリーは、一見して瑕疵がなくてもユーザーにとってはあまり価値がないケースが多い印象です。
立ち上げから1年を経て、ビジネスITのユーザーにとっての価値を追求し、デジタル活用事例の情報の価値を相対化できるメディアプラットフォームとしてCaseHUB.Newsを進化させていきたいという思いを改めて強くしています。そして具体的な新しい取り組みとして、蓄積してきた記事を活用したビジネスITユーザーの目下の動向分析にも着手しました。ITのユースケースというニッチな領域に特化して記事を蓄積することで、非常に付加価値の高い二次的コンテンツやサービスを創り出せる可能性があると私たちは考えています。記事アーカイブの情報資産としての価値に注目し、一つ一つの記事を相対化して分析した結果を、新たなメディア体験につなげようという意図です。
こうした取り組みを見据えていたこともあり、この1年は、事例として見るべきものがあるネタを選定することを前提としつつ、企業の規模や業種、課題、導入した製品・サービスの種類を問わず、なるべく幅広いIT活用事例を記事化することを心がけてきました。しかし結果的には、「業務効率化」を目的としたIT活用の事例記事が全記事の7割以上を占めることになりました。また、導入したIT製品/ソリューションの種類別では、「ビジネスアプリケーション」の事例記事が600本以上と半数に迫る勢いです。まだまだベーシックな「デジタル化」の事例が圧倒的に多く、デジタル活用の現実の一端が表れているのではないでしょうか。
ただし、AIを含む「先進テクノロジー」活用の事例も3番目に多く、加速度的に増えてはいます。生成AI活用が実装のフェーズに入ったというのは、ベンダー側の常套句にもなりつつありますが、一方で、世の中に公開されている情報はまだまだ平面的で、リアリティを感じさせるものが少ないとも感じます。先日、ある大手ベンダーにAIエージェントの自社活用について取材する機会がありました。そこにはやはり、Webサイトのプロダクト情報やニュースリリースではほとんど表現されていない課題意識や挑戦のストーリーがありました。
CaseHUB.Newsの2年目は、そうしたリアルを解き明かすための取材活動を強化します。さらに、そうした個別の深掘りと、先進事例からベーシックなデジタル化事例までを含めた記事群全体の傾向分析と掛け合わせ、ユーザーにとっての価値ある示唆を提供できるメディアを目指します。引き続き、ご支援をよろしくお願いいたします。
(CaseHUB.News編集長 本多和幸)