TDCソフト(以下:TDC)は、NTTデータが指定するコアパートナーとして、多様なプロジェクトで強固な協力関係を築いてきた。今回、国内大手の通信関連企業(以下:クライアント企業)が、既存のクレジットカード業務システムを委託形態から自社主体の独自ブランド基盤へと切り替える、大規模な内製化プロジェクトに参画した。
新たな金融領域への挑戦という状況の中で、金融システムとしては異例ともいえる約3年という短期間での開発が求められていた。TDCは金融領域における高い専門性を活かし、社員代替型の参画という形で上流工程から参画し、GitLabを軸としたDevOps体制の整備とプロアクティブな品質管理を実践した。
これらのソリューション提供により、通常5年から10年かかるとされるカードシステムの新規開発を、計画通り約3年で完了させ、数千万会員規模でも安定稼働を実現。高難易度プロジェクトの成功に不可欠なパートナーとして、その実力を発揮した。
クライアント企業は従来、他社のシステム基盤を委託形態で利用しクレジットカード事業を展開していた。しかしこの形態では、サービス展開の柔軟性やスピードに制約があった。自社主導での迅速なサービス開発と持続的な事業成長を実現するため、独自のシステム基盤を内製化する必要性が生じていた。
このプロジェクトは、単に新規システムを構築するだけではなかった。当時すでに数千万人規模に達していた既存会員を新システムへ移行し、将来的な会員増加にも対応可能な、極めて大規模なシステム基盤を確立する必要があった。さらにプロジェクトには約3年間という短期間での厳格なスケジュール要件があり、この期間の中で確実な品質確保とスケジュール遵守の両立が求められた。
プロジェクトを主導したNTTデータのチームは、通信系のシステム構築における豊富な実績と技術力を持っていた。NTTデータ テレコム・ユーティリティ事業本部 デジタルコマース事業部 ビリングデザイン統括部 統括部長の宮本孝之氏は「通信領域で極めて大規模なシステムに対応できる高い技術ノウハウと高度な性能要件をこなす自信はありました」と語る。
しかし、クレジットカードの審査や与信管理といった金融特有の業務は、今回のNTTデータのチームがこれまで主に手がけてきた通信領域とは異なる分野であり、新たなチャレンジ領域でもあった。
クライアント企業にとっても、金融サービスへの本格参入は初めての試みであり、(要件定義の段階では)最適なシステム像を模索している状況だった。 そのため、NTTデータは金融分野の知見とノウハウを持つパートナーの必要性を強く認識していた。もちろんNTTデータには金融分野を専門とする部隊もあり、この領域の知見やノウハウは豊富にあったが、体制や役割分担を踏まえ、今回は別の体制で支援を検討することとなった。
そこで、NTTデータのコアパートナーでもあり、クレジットカード業界で高い実績を持つTDCが有力な候補として選定された。TDCが持つ高い金融業界の知識とノウハウ、スピーディなプロジェクト推進力にくわえ、NTTデータ内部の金融チームからの紹介もあり、TDCのプロジェクト参画が決まった。
TDCが担当したのは、新規入会審査や与信管理など、クレジットカードの中核業務を支える審査・与信管理システムの構築だった。金融業界では、既存のデータやサービスを活用したスコアリングや与信の仕組みが、今後の事業拡大や新サービス創出を支える重要な要素と位置づけられており、将来的な金融業務拡大の要とも言える領域である。
TDCソフト 金融システム事業本部 ペイメント統括部 チーフエキスパートの長末貴文は、「クライアントには、内製化をしたいとの強い思いがありました。内製化して定着させるには、構築プロジェクトを通じてクライアント側でも金融システムのノウハウを習得し、自走できる体制を築く必要があります」と語る。
そのためTDCは、単なる受託の枠を超え、クライアント企業の一員としての立場で業務を支援する「社員代替」という形で上流工程から深く参画した。
TDCソフト 金融システム事業本部 ペイメント統括部 統括部長の川崎章生は「TDCは他のクレジットカード会社でも社員代替として業務推進の経験が豊富にあるので、その強みとスピード感を生かし、要件定義や設計といった上流工程から深く関与しました」と語った。
プロジェクトの初期段階、クライアント側では、システム化の方針についてさまざまな選択肢を検討していた。そこでTDCは、コンサルティングサービス的なアプローチで臨んだ。長末は「まず、金融ノウハウを持つメンバーが業務フローを詳細に明文化し、あるべきシステムの全体像を提示しました」と振り返る。
さらに、金融業界で一般的に採用されている仕組みや運用の考え方など、具体的な情報も積極的に提示し、クライアントがイメージしやすい形で仕様の合意形成を図った。このようなやり方で、TDCのメンバーは、クライアント企業とNTTデータの双方の一員であるという意識のもと、主に「社員代替」としてクライアント企業の課題解決を支援する立場で上流工程に携わり双方の知見を融合しながらシステムの基盤を構築した。カードシステムのコアロジックを設計する形で、クライアントの総合的な課題解決を支援した。
約3年間という限られた期間の中で、法令対応や品質向上のための調整を重ねながらも、確実な進行管理により計画通りの開発を実現した。「法令にしっかり対応するため、試験項目を増やすなど万全の体制で臨みました」と宮本氏は言う。
TDCソフト 金融ビジネスデザイン事業本部 金融ソリューション統括部 金融システムエンジニアリング部 マネージャーの田村光顯も「これまで携わったプロジェクトの中でも、今回は特にビジネスの状況変化に即応し、継続的な改善が求められるプロジェクトでした」と振り返る。
TDCは、この柔軟な仕様変更に迅速に対応できるようにするさまざまな工夫を行った。たとえば、複数メンバーが携わる開発体制では、DevOpsプラットフォームを活用し、変更管理とリリース統制を徹底。開発効率と品質を両立する体制を整えた。「複雑な変更が同時並行で進行しても、最終的に安定したリリースを目指せるよう、ブランチ戦略や運用ルールを詳細に策定し、徹底したマネジメントを行いました」と田村は言う。
さらに、スケジュールを脅かす厳しい状況も発生した。2020年4月には新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、プロジェクトは一時的に中断を余儀なくされた。金融システムの開発という特性上、セキュリティが担保された現場での作業が必須であったが、全員が一時自宅待機をしなければならなかった。
これに対しNTTデータは、TDCと協力して短期間で安全なテレワーク環境を構築した。「セキュリティを担保した上で、短期間で安全なネットワーク環境を再整備し、大規模な開発体制に対応する機材手配も迅速に行いました」と、宮本氏は振り返る。この迅速な環境整備と、テレワークによる生産性の低下を見越した徹底的な管理体制への移行により、プロジェクトは再開。当初予定のサービスインの期限を守り抜くことができた。

TDCは、サービスイン後の安定稼働に向けた品質管理に注力した。そのために、トラブル発生後に事後対処するのではなく、プロアクティブに対応する姿勢を実践した。何か問題が発生した際に、対象の問題だけを解決するのではなく、関連する部分の影響をしっかり見極める。これにより発生しうるトラブルを予測し、事前に対処するようにした。
NTTデータ テレコム・ユーティリティ事業本部 デジタルコマース事業部 フィナンシャルデザイン統括部 課長の吉田夕輝氏は、「個別の課題は発生しましたが、それが大きくなる前に、TDCと一緒になって着実に対応し、問題が大きくなる前に解決できました」と振り返る。
また、リリースまでは、特定の領域における専門家を明確に定め、その仕様を細部まで把握する体制を構築するという、専門領域ごとの責任者を明確化する体制を採用した、と田村は振り返る。これにより、変更や障害が発生した際に、社内に確実に対応できる人財がいる状態を作り出した。この体制が、問題への迅速な初動と影響範囲の特定を可能にした。
このリリースまでの体制は、本番環境の安定稼働にも貢献している。システム稼働後は専門家による暗黙知を形式知としてしっかりマニュアル化し、それを活用して要員のローテーションや計画的な引き継ぎをスムーズに実施できるようにしている。これも安定的な運用に寄与している。
NTTデータとTDCの強固な連携、そしてTDCの高度な専門性により、プロジェクトは予定通りにサービスインを迎えた。
その品質の高さは、稼働後の実績が証明している。吉田氏は、「サービスイン後の商用環境において重大なトラブルは発生しておらず、品質指標値内で推移しています」と評価する。
実はNTTデータの中でも今回のプロジェクトは当初、難易度の高い案件と認識されていたという。しかし、宮本氏はTDCの貢献を次のように総括する。「プロジェクトにおける三大リスク(業務ノウハウ、顧客ノウハウ、性能)のうち、TDCが業務ノウハウと顧客ノウハウの両面を強力にサポートしてくれたことで、NTTデータは性能要件の最適化と全体統合に専念できました。その結果、各社の強みがかみ合い、プロジェクトを成功に導くことができました。リスクが高いどころか、想定を上回るスムーズな進行だったというのが実感です」と、プロジェクトのパートナーにTDCを選んだことを高く評価している。
今回の成功の裏には、NTTデータ、TDC、そしてクライアント企業が一枚岩となった「ワンチーム」としての強固な信頼関係がある。現場では所属に関係なくフラットに意見を交わす文化が根づいており、率直な議論ができたことが成功の要因の一つである。「TDCのメンバーは、単に言われたことを正確にこなすのではなく、一緒になってこのシステムをより良いものにしていこうと強い心構えで臨んでいた」と、田村は言う。
本プロジェクトにより、クライアント企業では金融サービスの拡大に向けた基盤が整備された。川崎は「今後は金融系の得意分野を持つパートナーとして、カード事業だけでなく新規ビジネスでも協力をしていきたい」と展望を語る。TDCはNTTデータと連携をさらに深め、強固な信頼関係を基に顧客の事業成長に貢献し続けていく。

提供:TDCソフト株式会社