YKKは、製造現場の属人化解消と情報活用の高度化を目的に、製造業AIデータプラットフォーム「CADDi」を採用した。3月24日、同プラットフォームを提供するキャディが発表した。熟練者の技術や過去の図面資産をデジタル化することで、製造プロセスの合理化と世代間のナレッジ継承を加速させる。
世界約70の国と地域でファスニング事業を展開するYKKは、材料の溶解から製造機械の製作までを自社で手掛ける一貫生産を強みとしている。しかし近年、過去の類似図面を検索・活用する仕組みが不十分なまま新規図面が増え続けた結果、品番数が膨大になり、製造工程の複雑化やリードタイムの長期化が課題となっていた。また、特定の図面が特定の担当者や機械に依存する技術の属人化も進行しており、少量多品種かつ短納期への対応が急務となっていた。
こうした背景に加え、コロナ禍における業務の見直しや、外部の協力会社がデジタル活用によって工程を劇的に効率化させている事実を目の当たりにしたことが、組織の意識を変える契機となった。個人の経験や勘に頼っていた暗黙知を可視化し、標準化するための新たな基盤としてCADDiの導入を決めた。
導入にあたっては、CADDiのアプリケーションである「CADDi Drawer」の検索性の高さと動作の速さを評価した。従来のシステムでは検索に30秒以上を要していたが、CADDi Drawerは即座に情報を抽出できるため、ベテランから若手まで幅広い層に受け入れられた。
導入の効果は多岐にわたる。従来は数万件に及ぶ過去の図面や不具合情報を目視で確認することは不可能だったが、導入後は1〜2日でのデータ抽出が可能になった。図面を起点に過去の不具合事例を迅速に紐付けられるようになり、工程集約の判断や加工の合理化に寄与している。また、安価な調達事例を他部署から発見するといった、新たな気づきも生まれている。
若手社員の育成面でも変化が現れている。指導スタイルが、まずCADDi Drawerで自ら情報を確認し、その上で不明点をベテランに尋ねる形へと変わったことで、若手の自己完結できる業務範囲が拡大した。これにより、ベテランの退職や異動に伴って失われつつあったノウハウをデジタル資産として蓄積でき、着実なナレッジ継承が実現している。
今後は、機械製造部門だけでなく設計部門も巻き込み、上流工程からの部品標準化をさらに加速させる。部門を越えてナレッジを共通化し、世界中の工場で均一な品質の製品を届けられる体制をAIでコントロールすることを目指す。
YKK常務執行役員の松井勇氏は、手戻り作業に追われるのではなく、よりクリエイティブな業務に時間を充てられる組織にしたいと考えていると述べている。新図面が増え続ける流れをCADDiで変えられると実感しており、日本の製造業が勝つために不可欠なデジタル化とAI活用の挑戦を、社内だけでなく製造業全体へ広げていきたいとしている。