トヨタユーゼックは、中古車オークション業務を支える基幹システム「TOMAS」の基盤をオラクル(Oracle)のクラウドサービス「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」に移行した。4月24日、日本オラクルが発表した。従来はオンプレミス環境で運用していたが、データ量の増加への対応や処理速度の改善、運用負荷軽減などを目的にクラウド化を決断した。
トヨタユーゼックは1955年創業のトヨタ自動車グループの中古車専門会社。中核事業であるオートオークション事業では、現在、サテライト会場を含む全国16会場まで拠点が拡大している。
2005年から稼働しているTOMASは、オークションに関わるあらゆる業務を担う基幹システムだ。オンプレミス環境で稼働するオークション会場のセリ・システムやWeb上の中古車オークション・サイトと緊密に連携し、全てのシステムのマスターデータを管理。全国約1000人の従業員が利用している。
TOMASは従来、「Oracle Real Application Clusters(RAC)」を採用し、オンプレミス環境の「Oracle Database」上で稼働していたが、今後の継続的な事業成長を見据え、システム基盤の刷新を決断。複数のパブリッククラウドを比較検討し、OCIを採用した。
OCIの選定理由としてトヨタユーゼックは、既存のシステム環境からの移行のしやすさ、すでに社内システムで活用していたOracle Exadata Database Serviceの性能と安定性を評価していたこと、データベースの集約によるコストメリットなどを挙げている。また、東京と大阪のデータセンターを活用したDR構成を実現できる点も評価したという。
システム基盤刷新プロジェクトはフルエナジーが担当し、日本オラクルのコンサルティングサービス部門が支援した。22年4月に設計に着手し、23年1月にはOCIへの切り替えを完了した。
OCIへの移行により、TOMASの処理速度は大幅に向上したという。従来は180分かかっていた処理が20分に短縮されるなど、最大で9倍の高速化を実現したとしている。また、Oracle Databaseの「Oracle Multitenant」機能を活用したデータベース集約により、運用負荷の軽減も実現。さらに、Oracle Exadata Database Serviceでデータベース・インフラ環境の集約率を高めたことや、パブリッククラウドを活用することで柔軟なCPUリソースの増減が可能になったことで、全体的なコスト削減にもつながっているとしている。
トヨタユーゼック 情報システム部長の押切玲氏は、「TOMASが安定稼働していなければオートオークションの事業は成り立たない。今回、システム基盤をOCIで刷新し、DR環境も構築したことで、性能、運用のしやすさ、コスト削減、BCP対策など、オークション業務運営に多くのメリットがもたらされた。想定よりも短期間で切り替えまで進められたことにも満足している」とコメントしている。