杭全神社(くまたじんじゃ)は、重要文化財の保護と防犯体制の強化を目的に、アクシスコミュニケーションズ製のネットワークカメラと、キヤノンシステムアンドサポートの運用支援サービス「まかせてIT 映像ソリューション」を導入した。8月25日、同サービスを提供するキヤノンシステムアンドサポートが発表した。カメラに搭載されたAI機能で侵入者検知の精度を高め、誤報を大幅に削減。夜間対応をはじめとする職員の業務負荷を軽減し、地域に親しまれる神社の安心・安全な環境づくりに貢献している。
杭全神社は平安時代に創建され、平野郷の氏神として地域共同体の中心的役割を担ってきた歴史を持つ。しかし近年は、地域のつながりの希薄化や職員の少人数化といった課題に直面。国の重要文化財に指定された本殿などを保護するための防犯体制に懸念を抱えていた。従来は赤外線センサーを用いたシステムを運用していたが、木の葉の揺れや小動物にも反応して誤検知が頻発、侵入者を見逃すリスクがあった。また、ケーブルでモニターと繋げて利用するアナログカメラであったため映像の遠隔確認ができず、警報のたびに職員が現地へ駆けつける必要があった。
これらの課題を解決するため、今回新たな防犯システムを構築した。参拝者が立ち入らない重要文化財の周辺エリアに侵入者を検知すると、ネットワークカメラと連動したストロボサイレンが音と光で威嚇する。同時に管理者のスマートフォンにアラートが通知され、夜間や不在時でも即座に現地の映像を確認できるようになった。カメラにはAIベースの分析機能が搭載されており、人物のみを的確に検知・追跡することが可能だ。これにより、動物などによる誤検知を大幅に低減し、監視精度の向上を実現した。
システムの安定稼働と運用面の支援は、まかせてIT 映像ソリューションが担う。トラブル発生時の保守対応なども含まれており、職員は安心して本来の業務に専念できる。新システムの導入により、従来は休日や昼夜を問わず2〜3日に1回の頻度で発生していた誤報が、月1回程度にまで激減している。遠隔から神社の状況を映像で確認できるようになったことで、職員が現地に赴く必要がなくなり、夜間対応の負担が軽減されただけでなく、日中の参拝者への対応といった業務に集中できるようになった。
杭全神社の禰宜である藤江寛司氏は、キヤノンシステムアンドサポートの支援体制を評価している。「こちらの意図を理解し、より良い案を提示してくれた。設計会社や自治体とのやり取りも請け負ってもらったことが、望む形での導入につながった。外にいても夜間でもスマートフォンで神社の様子を確認できるようになったことは非常に大きな進化である。内部の業務はできるだけ効率化し、文化財の維持や魅力の発信といった変わらない価値を未来につなぐ活動に、より一層力を注いでいきたい」と話している。