慶應義塾大学公認学生団体「手話サークルMiMi」は、学園祭公演における来場者への情報保障を目的に、文字起こし支援アプリケーション「ScribeAssist」を活用した。12月11日、同アプリケーションを提供するアドバンスト・メディアが発表した。騒音の多い会場内でも高精度なリアルタイム字幕を提供し、運用担当者の省人化や準備作業の負担軽減につなげた。
手話サークルMiMiは、以前から公演中に音声認識ツールを用いてリアルタイム字幕を表示していたが、運用面で課題を抱えていた。従来の手法では、事前に司会原稿を手入力して準備する必要があり、大きな負担となっていた。また、本番中の運用においても、誤認識を修正する担当と原稿を送信する担当の2人体制が必須だったほか、舞台裏からの集音では周囲の雑音を拾いやすく、誤認識が多発していた。
そこで今回の「第67回三田祭」の公演では、これらの課題を解決するため、アドバンスト・メディアのScribeAssistと、オカムラのウェアラブルマイク「TALKHUB II」を採用した。ScribeAssistは、AI音声認識エンジン「AmiVoice」を搭載し、インターネット未接続の環境でも高精度な文字起こしが可能なスタンドアローン型のアプリケーションだ。今回は手話コーラスを解説する企画などで、発話内容をスクリーンに字幕表示するために使用された。
ScribeAssistと高性能マイクの併用により、字幕表示の運用は大幅に改善された。口元でのクリアな集音と高い音声認識精度により、バンド演奏が行われるような騒音下でも正確な字幕表示が可能になった。また、認識精度が向上したことで修正作業が減少し、従来2人必要だった運用体制を1人に省人化できた。事前の単語登録機能を活用することで、誤認識の修正作業もさらに低減されている。
イベント後のアンケートでは、字幕の精度について来場者から高い評価が得られた。「リアルタイムだとは気づかないほど正確だった」といった声が寄せられ、ろう・難聴者を含む来場者の理解促進に貢献した。サークルのメンバーは、「一度操作方法を覚えれば一人で問題なく運用できた」と評価している。今後はこうした技術活用が広がり、授業や公共の場でのアクセシビリティがさらに向上することに期待を寄せている。