スズキ、作業分析AIで組立工程の死角を可視化 ミス即時検知で不良流出防ぐ

2025年12月22日13:57|ニュースCaseHUB.News編集部
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 スズキは、生産現場の生産性向上や不良流出防止を目的に、作業分析AIソフトウェア「Ollo Factory」を採用した。12月22日、同ソフトウェアを提供するOlloが発表した。ウェアラブルカメラの映像解析を活用することで自動車組立工程などの死角をなくし、作業ミスをリアルタイムで検知する。国内工場での活用を通じて、技能伝承の効率化や品質のグローバル統一につなげる考えだ。

 スズキは中期経営計画における四輪車のグローバル供給体制の中で、国内工場を「グループのマザー生産拠点」と位置づけている。技術とノウハウの手本となる工場を目指す中で、社内ではChatGPTなどの汎用ツールの活用が広がっており、ものづくりの現場に直接貢献できるAIの定着も模索していた。

 特に自動車の組立工程などは、固定カメラによる監視では死角が生じやすく、正確な作業分析が困難な場合がある。また、熟練作業者の高度な技能をいかに効率的に新人へ伝承するか、月に一度や1台単位で発生するような慢性的な不良をどう解決するかといった課題に対し、人や現場のばらつきを可視化できるソリューションが求められていた。

 そこでスズキは、Ollo Factoryの採用を決めた。同ソフトウェアはウェアラブルカメラの映像解析に対応しており、固定カメラでは捉えきれない手元の作業なども高精度に分析できる点が特徴だ。これにより、新人と熟練者の動作の違いや、作業中のつまずきポイントを詳細に分析することが可能となり、教育や改善活動の効率化に寄与すると判断した。

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Ollo Factoryを用いた作業分析のイメージ

 今回の導入では、作業分析に加えてリアルタイム異常検知の機能も利用する。ネジの締め忘れといった作業抜けやミスをAIがその場で検出し、即座に対応を促すことで、不良品の検知を自動化し、流出防止を図る。

 スズキとOlloの協業は約1年前から始まっている。スズキ専務役員の市野一夫氏は、「当初より、AIを活用して熟練作業者の高度な技能を効率的に新人へ伝承する技術に大きな期待を寄せていた。慢性的な不良の根本的な解決に向け、タクトタイム内の重要な作業ポイントをリアルタイムで検出することが有効ではないかと相談し、解決策の提案を受けた」と経緯を振り返る。その上で、「今回の導入により、課題に対するソリューションが実現したことを心強く感じる。生産現場の品質安定と効率化が一層進むことを期待している」と話している。

 今後は、人や現場のばらつきをAIで可視化することで生産技術の継承と精度向上を支援し、国内工場を皮切りに品質のグローバル統一への貢献も目指す方針だ。

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