宇都宮製作、生成AIへの心理的壁を打破しメール作成時間を最大8割削減

2025年11月6日21:56|ニュースCaseHUB.News編集部
x
hatebu

 衛生用品の総合メーカーである宇都宮製作は、Google Workspaceと生成AIサービス「Google Workspace with Gemini」の全社的な導入と活用を開始した。11月5日、基盤構築と活用支援を担当した吉積情報が発表した。ツールの活用を全社に浸透させるとともに、社員のAIに対する意識改革と業務効率化を実現した。特に生成AIへの心理的ハードルを下げ、これまで15分かかっていたメール作成が1分から5分に短縮されるなど、目に見える成果が報告されている。

 宇都宮製作は、2020年にGoogle Workspaceを導入したが、Gmailが中心で共有ドライブなどの機能は活用されていなかった。その結果、情報共有は旧来のファイルサーバーに依存し、営業担当者などが社外からアクセスできないなど業務上の大きな障壁となっていた。また、社内ナレッジが個人のPC内に属人化し、企業の情報資産として蓄積されないことも課題だった。さらに、以前は機能に関する不明点への回答がなかなか得られず、気軽に相談できる頼れるパートナーを求めていた。

 複数のパートナーを検討した結果、吉積情報の支援を選定した。選定の決め手は、吉積情報が掲げる「機能をかさ増しするのではなく、あるものを活用する」方針への共感だった。すでにツールが導入され、次のフェーズとして全社で使いこなす必要があった同社にとって、導入から活用までをサポートする伴走支援プログラム「My Start」の提案が後押しとなった。加えて生成AIの活用では、入力情報がAIの学習に使われないクローズドで安全なGoogle Workspaceの環境であることが必須条件であり、これを一番の評価ポイントとした。

 吉積情報の伴走型支援のMy Startの実施で、Google Workspaceの活用が全社的に進んだ。その結果、複数のツールを立ち上げる必要がなくなり、Google Workspace一つに情報が集約された。稟議作成や予実表なども常に最新版のファイルが全社で共有可能となり、特に共同編集のしやすさや、誤編集してもすぐに元に戻せるとの安心感からスプレッドシートの利用が現場で大きく進んだ。また、スマートフォンから安全にアクセスでき、時間や場所を問わず情報共有が可能となり、経営視点からも大きなメリットをもたらした。

 Google Workspaceの定着と並行し、社長自らがリーダーシップを発揮する形で生成AI「Gemini」の導入・活用も推進された。世の中で生成AI格差が生まれつつあるとの危機感から、「生成AI弱者になってはいけない」との方針のもと、まずは安全な環境で触れ、仕事のやり方を変える楽しさを感じてほしいとの考えがあった。活用を全社に浸透させるため、生成AI導入・活用支援プログラム「AI Driven」を実施した。その事後アンケートでは、生成AIに対する「脅威」というネガティブなイメージが5.8%から0%になり、「便利」というイメージが69.2%から84.1%へと増加、社員の心理的なハードルが下がった。

 プログラム実施後、「自身の業務で活用できる」と回答した社員は65.4%から85.5%へと向上した。具体的な効果として、これまで15分かかっていたメール作成が1分から5分に短縮され、40分かかっていた議事録作成が10分に短縮されるなど、目に見える成果が報告されている。単に作業が速くなるだけでなく、Geminiが自分では思いつかない言い回しを提案してくれるため、文章を推敲する精神的な負担も大きく軽減された。これにより、社員はより創造的な業務に時間を使えるようになる。

 同社の代表取締役社長である大西浩太郎氏は、「企業の規模に関わらず、生成AIの活用は必須である。もはやExcelやメールを使うのと同じレベルで、当たり前になっていかなければならない」とコメントしている。さらに、「まず経営層がリーダーシップを発揮し、難しそうと思わずに使ってみるという文化を醸成することが大切である。安全なGoogle Workspaceの環境であれば、安心して試すことができるからだ」と述べ、全社的な活用には経営層の姿勢と、成功体験の積み重ねが不可欠だとの見解を示した。

 宇都宮製作は、今回のプログラムで全社員が生成AIを本格的に活用していくための土台はできたとみている。今後は、今回得られた成功体験を社内でさらに情報発信し、世代に関わらず全社員が生成AIを使いこなし、「生成AI格差」のない「生成AI強者」となることを目指し、活用のレベルをさらに引き上げていく。

ニュースリリース