ヤオコーは、Amazon Web Services(AWS)を基盤とした内製開発を推進するため、サーバーワークスの伴走型支援サービス「クラウドシェルパ」を採用した。9月2日、サーバーワークスが発表した。複数の外部ベンダーが関与し、標準化が進まなかったAWS環境を一元管理し、ガバナンスの統一化とコストの最適化を図る。
埼玉県を中心に食品スーパーマーケットを展開するヤオコーは、2021年からデジタル統括部を主体としたデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進している。しかし、それ以前から進めていたAWSへのシステム移行は、社内の知見不足やマルチベンダー体制が足かせとなり、全社的な統制や最適化が困難な状況だった。
そこでヤオコーは、自社でハンドリングできるAWS環境を新たに構築し、内製化を進めていく方針を決めた。ただ、変化の速いAWSのテクノロジーをキャッチアップし、メンバーのスキルを向上させるためには、外部パートナーの支援が不可欠と判断。複数の候補の中から、小売業界での支援実績とヤオコーの課題への理解を評価し、サーバーワークスに支援を要請した。
2024年4月に「クラウドシェルパ」による伴走支援を開始し、まずAWSの有識者による既存環境の診断を実施した。その結果、AWS運用自動化サービス「Cloud Automator」を活用するなど、人的負荷をかけずに迅速なコスト削減が可能であることが判明した。
その後、内製化を本格的に進めるため、AWS活用の標準ガイドラインを策定した上で、重点テーマを「アカウント統制の強化」「オブザーバビリティの向上」「運用の自動化」の三つに定めて具体的な取り組みを開始した。
アカウント統制では、「AWS Control Tower」と「AWS Organizations」を使い、複数のチームやベンダーが個別に管理していたアカウントを統合管理基盤に移行。手動での管理をすることなく、セキュアな環境を構築した。
オブザーバビリティの向上では、システム全体の稼働状況を統合的に監視するため、「New Relic」を導入し、監視ツールや方式を統合した。内製化チームのメンバーがシステムの状況を共有できるダッシュボードを構築し、インフラやネットワークの可視化を進めている。
運用の自動化では、手動で行っていた開発・運用の効率化を図る取り組みを実施。インフラ構築をコードで管理する「Terraform」を用いた標準テンプレートを作成し、継続的インテグレーション・継続的デリバリー(CI/CD)環境を整備した。
これらの取り組みにより、ヤオコーのチームとしての内製開発力は強化されたという。デジタル統括部 プロダクト開発主事の山田聡美氏は、「新たなコールセンターシステムでは、サーバーワークスに構築からオブザーバビリティの向上まで幅広く支援いただき、私たちの取り組みを後押ししていただけたことが大変心強かった」と話す。
また、コスト最適化についても継続的な成果が生まれている。デジタル統括部 プロダクト開発担当マネジャーの飯久保友哉氏は、環境診断に基づくコスト削減策に加え、長期利用をコミットすることで割引が適用されるリザーブドインスタンスやセービングプランの利用を検討・実施することで、コスト削減を進めていると述べている。
ヤオコーは、運用の自動化など、引き続きサーバーワークスの支援を受けながら課題に取り組んでいく方針だ。執行役員 CDO デジタル統括部長の小笠原暁史氏は、「今後も生成AIの活用を含め、客観的な視点で背中を押してもらえることを期待している」と語っている。