ジヤトコ、RAGとナレッジグラフ活用し暗黙知を形式知化 開発プロセスの変革へ

2025年7月11日09:10|ニュースCaseHUB.News編集部
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 ジヤトコは、ストックマークのRAG実用化サービス「Stockmark A Technology」を採用した。7月10日、ストックマークが発表した。AIを活用し、長年蓄積してきた設計ナレッジや技術文書などの形式知化を推進し、開発プロセスの変革を目指す。将来的には「自動設計プラットフォーム」の構築につなげたい考えだ。

 日産自動車グループで自動車用トランスミッションの製造などを手がけるジヤトコは、自動車産業における電動化という大きな転換期を迎えている。この変化を成長機会と捉え、既存事業の強化と新事業領域の開拓に取り組む中で、仕事の進め方そのものを変革する「プロセスイノベーション」を重要な経営戦略と位置付けている。

 同社の技術開発部門では、長年蓄積された設計ナレッジの多くが文書化されず、個人の経験や記憶に依存する暗黙知となっていることが課題だった。経験豊富なベテラン層の定年退職を控え、彼らが持つ知見が失われることへの強い危機感があったという。また、文書化されたナレッジは体系的に整理しているが、情報量が膨大になり、手動での情報検索や部署を横断した活用が困難になっていた。

 こうした課題を解決するため、同社は生成AIとRAGを活用した「自動設計プラットフォーム」の構築に着手していたが、自社での検証では、図表やグラフを多用する複雑な設計文書から適切な情報を高精度で抽出するのが難しかった。そこで、図や画像を含む多様な形式のデータを正確に構造化し、専門知識の概念間のつながりを「ナレッジグラフ」として構築できるStockmark A Technologyの採用を決定したとしている。

 Stockmark A Technologyの導入により、従来のキーワード検索では見落としがちだった情報間の関係性を可視化し、関連情報を網羅的に抽出できるようになり、開発の手戻りを削減できると見込む。また、「故障現象」と「原因」といった因果関係を明確に捉えることで故障分析を高度化し、将来的な製品品質の向上につなげたいという。

 ジヤトコ常務執行役員で開発部門を担当する田中寛康氏は、「ベテラン層の知見という貴重な財産を失う前に全社で共有できる形にしなければならないという強い危機感があった。SATは、私たちが目指すプロセスイノベーションと、将来的な自動設計プラットフォーム構想の実現に不可欠な技術だと確信している」と評価。また、イノベーション技術開発部主管の中崎勝啓氏は、「ベクトル検索だけでは、図や表を多用する設計文書の複雑な文脈をAIに理解させることは困難だった。ストックマークの『ナレッジグラフ×RAG』というアプローチは、情報同士の因果関係を捉え、RAGのブラックボックス性を解消できる点に大きな可能性を感じている」とコメントしている。

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