「文書作成を、再発明する。」をミッションに掲げるFRAIMは、AI搭載ドキュメントワークスペース(文書作成・管理プラットフォーム)「LAWGUE」と、自律型業務プラットフォーム「FRAIM Agentic Platform」を提供している。スタートアップ企業としてプロダクト開発に集中的に投資する段階を経て、同社は現在、事業拡大と収益化を同時に進める"成長フェーズ"にある。FRAIMのサービスでは、検索プラットフォームの「Elastic」が検索とコンテキスト管理の基盤として機能しており、その上に自然言語処理やAIエージェントの仕組みを重ねている。FRAIM 代表取締役社長兼CTOの宮坂豪氏と、開発部VP of Machine Learningの水野多加雄氏へのインタビューを基に、同社サービスの仕組みやその強みについて紐解いていく。
FRAIMのLAWGUEは、契約書や規程などリーガルドキュメントの作成・レビューへの活用を起点として顧客基盤を拡大してきた。現在では、より広範な業務を対象に、過去の類似文書やお手本となるひな形を「探す」「比較する」「編集する」手間を省き、日々の業務を支援するプラットフォームとして進化している。
しかし、個々の文書単位の効率化だけでは、営業提案から契約締結、社内承認に至るまでの業務フロー全体での最適化効果は限定的だ。そこでFRAIMは、文書単体ではなく「業務プロセスそのもの」をAIとともに動かす仕組みの構築へと踏み出した。
LAWGUEで培った文書検索・ナレッジ活用の基盤を土台に、AIエージェントが業務フロー全体をまたいで効率化を図る。こうした構想を具現化するのが、2026年3月23日にリリースした「FRAIM Agentic Platform」だ。
宮坂氏は「AI活用のフェーズは、単なる部分最適化から組織のあり方の変革へと移行しています。AIエージェントは単なる壁打ち相手ではなく、人と同じように働けるAI社員のような位置付けであるべきです。FRAIM Agentic Platformは、人とAIが境界線なく協働し、役割分担しながら業務フローを進めていくための土台です」と説明する。
LAWGUEからFRAIM Agentic Platformへと広がるAIサービス群で、AIが適切な判断を下すための「コンテキスト(文脈)」の管理を担っているのがElasticだ。Elasticは単なる全文検索エンジンではなく、自然言語処理や、AIエージェントと人の双方が利用するコンテキストの基盤として機能している。
水野氏は「契約書や規程には、会社名や日付などの固有情報が多く含まれます。これらをベクトル検索やキーワード検索と組み合わせて、AIが文脈を理解できる状態で提供できなければ、AIの精度は向上しません」と説明する。Elasticが備える高度なハイブリッド検索機能は、AIエージェントの判断基盤として最適だと評価しているという。
一方で、成長フェーズにあるFRAIMにとって、運用効率の改善は重要な経営課題だった。かつてはテキスト検索にElasticのマネージドサービスである「Elastic Cloud」を使い、ベクトル検索には独自の仕組みを用いていたが、AIの活用が広がるにつれて独自システム側のコストや運用負荷が増大した。
そこで同社は、ベクトル検索もElastic Cloudに移行し、検索システムを一つのクラスタに統合した。水野氏は「テキスト検索とベクトル検索をマネージド環境で一元的に扱えるようになり、複雑な検索要件を一貫した環境で処理できるようになりました。検索基盤を作り直すことなくRAGやAIエージェントに必要な機能を追加実装できる点は、開発スピードの面で非常に大きな強みです」と語る。結果として運用負荷が下がっただけでなく、50%以上のコスト削減にも成功している。
システムの安定稼働や開発効率の面では、Elasticからの手厚いサポートや充実した開発者エコシステムが課題解決を後押ししているという。「検索といえば誰もがElasticを思い浮かべるほど、実質的なデファクトスタンダードになっています。コミュニティや公式ドキュメントなどの情報が既に充実しており、安心して開発を進められるメリットは大きいです」と水野氏は評価する。
さらに、法務関連の文書で重視される「情報の正確性」についても、FRAIMはテクノロジーを妄信しない現実的なアプローチをとっている。AIに過去のナレッジを根拠として提示させるだけでなく、確認すべき項目をまとめた「プレイブック機能」の実装を進めている。水野氏は「AIに100%の精度を求めるのは現実的ではない。しかし、このプレイブックをAI自身に使わせて回答精度を上げつつ、人間も同じリストで最終確認を行うサイクルを回せば、実用レベルでの業務品質を十分に担保できます」と説明する。
FRAIMの取り組みは、単独のSaaSプロダクトを提供する従来のアプローチから、ユーザーの既存の作業環境に直接入り込む方向へとシフトしている。4月7日には、LAWGUEの編集機能をWordのアドインとして無料で提供する新サービス「スグラク」をリリースした。基盤を広く普及させることで、将来的な有料プラグインの展開やパートナーエコシステムの拡大を見据えている。
今後の技術的な展望として、水野氏は官公庁や自治体などセキュリティを最優先する現場を念頭に、「データをクラウドに上げられないケースも多いため、今後はローカル環境でもセキュアに検索やAI処理を完結できる仕組みが重要になります」と指摘。Elasticに対しては、バーチャルファイルシステムのようにローカルからクラウドまで一貫したインターフェースで扱える機能の拡充を望んでいるという。
また、宮坂氏も「データ基盤と検索技術の境界が曖昧になる中、技術の進展とともに求められる機能は常に変化します。しかし、我々が目指す文書作成・管理業務の再発明において、最適なナレッジをいかに提供するかという本質は変わりません。Elasticには、検索という枠を超えたデータインテリジェンスのプラットフォームであり続けてほしいです」と期待を寄せる。
検索基盤は、単に情報を探し出すためのツールではなく、AIエージェントが人と役割を分担しながら業務を遂行するための「知的なインフラ」へと変わりつつある。FRAIMの取り組みは、AIと検索基盤を業務フローの中に組み込むことで、組織の仕事の分担や意思決定のやり方そのものを変えるITソリューションを提供しようとする試みといえそうだ。