サイバーコム、monday.comで属人化解消と業務対応スピードの向上を実現

2025年6月27日13:00|インサイト谷川 耕一
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 全国7拠点で事業を展開する創業45年のIT企業、サイバーコム。同社は長年、拠点や部署ごとに情報管理のフォーマットが異なっており、業務の非効率や経営判断の遅れといった課題につながっていた。この状況を打破すべく導入したのが、ワークマネジメントプラットフォーム「monday.com」だった。

情報の属人化管理は限界、情報が点在し経営判断も遅延

 サイバーコムは、横浜、仙台、新潟、東京、刈谷、名古屋、福岡の全国7拠点を持つ創業45年のIT企業。同社の最大の強みは全国に拠点を持ち、地域密着型で顧客に寄り添ったサービスが提供できる点にある。単一の製品にこだわるのではなく、顧客の課題解決を中心に据え、必要に応じフルスクラッチでの開発や、最適なソリューションの適用を柔軟に行うスタンスを取る。

 国内各地で幅広いサービスを展開する中、サイバーコムでは情報の管理とリアルタイムな共有に大きな課題を抱えていた。多様なフォーマットの情報が各地に点在し、二重三重に管理される非効率な状況だった。サイバーコム 横浜本社プライム担当常務執行役員の根釜克典氏は、「全国の拠点や部署が独自のフォーマットでデータを作成していたため、営業推進部がそれらを集約・整理する作業に大きな無駄を感じていました。情報整理に時間がかかり、経営判断の遅れにつながる懸念もありました」と語る。

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常務執行役員 根釜克典氏

 「最も課題だったのは、情報のリアルタイムな共有と対処のスピードでした」と続けるのは、営業統括部副統括部長兼ITソリューション営業グループグループ長の鈴木直登氏だ。「管理上、サーバーは一箇所にせざるをえなかったため、個々がローカルで保管しているデータをマージし、それを元に判断するのですが、このやり方ではどうしても(意思決定が)一歩遅れてしまいます」と述べる。

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営業統括部 副統括部長 鈴木直登氏

 案件情報の共有がリアルタイムにできていなかったため、当時は関東の営業担当が獲得した仕事は関東のエンジニアだけで対処するしかなかった。本来、業務そのものはリモートでも十分に進められる。案件情報が社内でオープンになっていればリソースに余裕のある事業所のエンジニアが対応できるが、情報共有ができていなければそれもままならない。

決め手は圧倒的な「柔軟性」、現場が"楽しく"使えるプラットフォーム

 より使い勝手の良い情報共有の仕組みを模索する中、有力なソリューションとして浮上したのが、プロジェクト管理や業務効率化を目的としたクラウド型のワークマネジメントプラットフォームであるmonday.comだった。同社社長の新井世東氏が海外のイベントに参加した際にmonday.comを知り、社内で情報を共有。根釜氏は「monday.comなら他のサービスでは困難だった情報の一元管理が可能になるのでは」と考えた。そこでmonday.comの評価を行い、ツールとしての柔軟性の高さが採用の決め手となった。「他のツールでは最初に運用のルールを固める必要があり、後からの変更に手間がかかります。その点、monday.comは導入後も項目などを容易に追加・変更できる点が優れていました」

 操作性の良さも評価したポイントだ。直感的に操作できるUI/UXで、営業部門が最初に利用した際も、すぐに目的の情報を参照するダッシュボードが構築できた。マニュアルなしでも容易に管理ができ、ユーザーはExcelのような感覚で扱える。ITに不慣れな営業担当者や事務方の社員でも、自ら触れるとっつきやすさがあった。

 monday.comは、従来のプロジェクト管理ツールが「管理される感覚」を与え、使う側を疲弊させる傾向があったのに対し、使って「楽しい」と感じさせるUIを追求しているという。社員が積極的に利用するツールになっていると、鈴木氏は評価する。

 また、「ワークOS」というプラットフォーム的なコンセプトも導入の後押しとなった。課題の管理だけでなく、進捗報告、状況報告など、さまざまな用途に汎用的に活用できる。情報共有のためにデータを蓄積するデータレイクのような発想とも異なり、現場社員が日々の活動の中で自然とデータが集まる仕組みがmonday.comにはあった。これは、基幹システムへのデータ投入に手間がかかる、あるいは月次でしか見たい情報が最新化されないといった課題を解決する上でも有効だった。

「特別な教育は不要」の言葉通りに、現場主導で進んだ段階的導入

 monday.comは、技術者リソースの協力を仰ぐパートナーの管理業務を行うパートナー推進室で先行して導入した。その後、2023年末頃に営業系の案件管理などを行うCRMの仕組みとして、営業推進部への導入が始まる。この初期段階は、企業情報や顧客情報を整理し、それまで散在していた情報をmonday.comに集約することに重点を置いた。これにより誰もが情報にアクセスしやすくなり、その利便性が評価された結果、現場の営業部門全体に利用が拡大することになる。

 営業部門での全社利用は、2024年2月に開始した。この段階では顧客リストの共有だけでなく、これまでメールで行っていた各種手続き依頼の業務などもmonday.com上で行うようにした。これにより、案件のステータスもmonday.com上で確認できるようになり、誰もがリアルタイムで状況を把握できる環境が整った。

 monday.comは操作が容易なため、導入に際してエンドユーザーから戸惑いや新しいツールに対する抵抗などのようなものはなかったと根釜氏は振り返る。特別な教育も不要で、基本的な操作は2時間程度のトレーニングで習得可能だった。鈴木氏は、「ベンダーに依頼せずとも、ユーザー自身がデータを追加したり、設定を柔軟に変更したりできる点が、従来のシステム導入とは大きく異なる利点です」と語る。

 営業部門と同時期に、パートナー技術者情報の共有管理にもmonday.comを利用するようにした。従来、各管理職が個別に連絡を取り合いパートナーの技術者を探していたが、monday.com上で技術者情報を一括管理することで、個々に技術者の空き情報を確認するなどの手間を削減し、業務効率化につなげている。

 さらに、現在ではICT事業部におけるプロジェクトの一覧管理もmonday.comへの移行を進めている。スクラッチで作成した既存システムを代替するもので、monday.comのワークフロー機能を使い、依頼・確認・承認のステータス管理を履歴として追えるようにしている。

 このように段階的に導入してきたmonday.comは、2025年秋に全社展開を予定している。既にmonday.comを導入し利用している部署のユーザーからは、「こんなこともできないか、あんなこともできないか」といった要望も出るようになっているとのことだ。

情報の壁が消えたとき、月500時間の余裕と新たな提案力が生まれた

 monday.comは、サイバーコム社員の働き方を変えつつある。営業部門では、顧客からの引き合い情報がmonday.comで一元管理されるようになり、情報確認の手間が省け、提案までのスピードが向上している。社内で情報がオープンになったことで、関東の案件にも地方拠点から対応できるとの声が上がるようになり、部門・地域を越えた協力が促進されている。これらは売り上げ向上と顧客満足度の向上にも寄与している。

 また、登録されても動きがない引き合いは、monday.com上で経過日数などが一目で分かるため、マネジメント層が積極的にケアできるようにもなった。根釜氏は、「情報は社員の感覚に合わせ自由にカスタマイズでき、常に新鮮な情報を利用できる」と評価する。

 ミーティングの際の情報活用も変化した。ミーティング中に不足している情報があれば、その場でmonday.comを参照し、すぐに足りない項目の追加や修正ができる。後回しによるタスクの抜け漏れを防ぐ効果もある。

 営業部門では、新しい業務フローや情報管理項目が必要になった際に、担当者自身がmonday.com上で簡単に仕組みを構築できるようになった。これにより、システム部門に依頼する時間や費用が削減され、短期間で新たな仕組みを展開できる。

 定量的な導入効果が特に顕著だったのが、前述のパートナー技術者の管理業務への活用だ。以前は50〜60人の技術系課長が個別に連絡を取り合っていたが、パートナー推進室がmonday.comで情報を一元化したことで、各課長の関連業務時間は月20〜30時間から10時間程度へと半減、ICT事業部全体では月間約500時間もの工数削減を実現した。

 同社の技術部門はmonday.comを「大好物」と表現しており、「Excelよりも多機能で汎用性と工夫のしがいがある点が魅力なようです」と鈴木氏は話す。簡単に使えつつも、工夫次第で高度な連携やデータ加工ができるため、エンジニアはExcelマクロを組むように楽しんでmonday.comを利用しているとのことだ。

自社の成功体験を生かし顧客にもmonday.comを提案

 monday.com導入後、年齢層や性別を問わずさまざまな社員から自発的な提案が生まれるようになり、ツールに対する社内全体の期待の高まりを実感している。属人化の解消に加え、各部署の引き合いを社内全体で確認できるようになったことで、組織全体の一体感も生まれている。

 monday.comの導入効果を実感したことを受け、サイバーコムは今後もその活用範囲を広げていく方針だ。プロジェクト管理のテンプレート化とコード化を進め、隣のチームで成功した運用を横展開していくことで、全社のレベルアップを図るという。

 さらに、monday.comのソリューションパートナーとして、自社での導入事例や課題解決のノウハウを他の企業にも展開していきたいと考えている。特に、Excelによる拠点ごと・担当者ごとの個別管理の非効率さに悩む企業に対し、monday.comを提案していく考えだ。


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