オカムラは、全社のサプライチェーン管理に、ウイングアーク1stのデータアプリ基盤「MotionBoard」とデータマネジメント基盤「Dr.Sum」を活用し、在庫や受注、生産の状況を経営層から事業所まで共通の指標で把握できる仕組みを整えた。10月5日、ウイングアーク1stが発表した。2024年10月に稼働を始め、異常の兆候を早期に察知しやすくなった。今後は、設備の稼働ログなどの生産データを、判断や行動につなげる活用を検討する。
オフィス家具を中心に、店舗・商環境や物流システムも手がけるオカムラは、需要の繁閑差が大きい。特にオフィス関連は3月に需要が集中し、単月で通常の1.5~2倍の受注が入ることもある。顧客ニーズの細分化で少量多品種化が進み、社内で生産できるものは自社で生産する方針から、工場間の受発注や輸送も増えている。必要な時期に納入できなければ他社製品に切り替えられるため、適正在庫の維持とリードタイムの短縮が課題だった。
同社は以前から他社のBIツールで生産現場の見える化を進めていたが、担当者がデータを抽出・加工して掲示する使い方が中心で、活用できる人も限られていた。2023年8月、つくば事業所の新工場の竣工に合わせてMotionBoardを使い、出来高や生産進捗、スタッフ業務の工数を確認するダッシュボードを構築した。同年12月以降はほかの国内生産事業所へ広げ、現場の担当者が日常業務でデータを使う動きが定着した。ただ、各事業所の状況を全社で一元的に把握し、共通の判断に使うところまでは至らなかった。
課題は、複数のシステムに分散するデータだった。基幹データベースには詳細なデータがあるが、必要なデータは細かく分かれ、抽出に人手と時間がかかる。Excelなどほかのデータとの連携も要り、Excelに集約すると、1人が毎日数時間を費やす作業になった。そこで同社は2024年6月、データマートの基盤としてDr.Sumを採用し、本社と各事業所が共通の指標で在庫の状況を把握する仕組みの構築に着手した。確認したい指標と画面のイメージをExcelで具体化し、ウイングアーク1stと協働でデータ構造や加工、表示の方法を検討した。
全社向けのダッシュボードは、在庫、受注、生産計画など各システムのデータとExcelのデータをDr.Sumで集約・加工し、MotionBoardで可視化する。中心の「日程管理指標」は、納期回答、在庫、ストックアウト(欠品)、受注生産品のリードタイムなどを1画面にまとめ、朝一番と午後2時の1日2回、登録ユーザーに配信する。受注は日中に随時変動するため、朝の時点で問題がなくても、その後の受注で在庫が変わる。不足の兆候があれば生産側がすぐに対応し、数百アイテムの常備在庫品の欠品を防ぐ。社内の通路に置いた大型タッチディスプレイ型のミーティングボードにも表示し、異常があれば商品の詳細までドリルダウンして確認できる。
経営層と現場が共通の指標で生産状況を把握可能となり、異常を早期に察知しやすくなった。24時間以内の納期回答率が通常は9割程度の事業所で6~7割まで下がれば、何らかの異常が起きていると分かる。営業部門向けの「製品在庫検索」では、全社の倉庫を横断した受注未引当在庫を確認でき、短納期の要望に対する提案の幅が広がった。販売機会の獲得と余剰在庫の圧縮の両方につながっている。各事業所との月2回程度の生産・販売・在庫(PSI)会議でも、共通の確認画面として使う。現場の要望は、画面を作って試し、意見を反映して改良する短いサイクルで形にする。ハンズオントレーニングを受けた担当者がおり、簡易な画面の作成や改修は内製している。
同社は2026年に始動した「中期経営計画2028」で「需要創出型企業」への転換を掲げ、事業構造改革や生産体制の最適化を進める。前の中期経営計画では、製品倉庫費用を年間約4億円削減し、現在約1.2カ月の在庫保有月数は、2035年度に半減を目指す。共通のMES(製造実行システム)では、設備の稼働ログやIoTデータを取り込む基盤を整えており、蓄積するデータを判断や行動につなげる活用を検討する。
サプライチェーン本部サプライチェーンマネジメント部の芝山博紀課長は「KPIは、四半期ごとや年次で振り返るだけでは意味がない。日次で数字が更新され、関係者が同じ画面を確認することで、KPIは単なる管理指標ではなく、実際のアクションにつなげる数字になった」と話している。