ベネッセコーポレーションは、家庭学習事業の販促物(ダイレクトメールなど)の校正に、neoAIと開発したAIアシスタント「neoPON(ネオポン)」を使っている。10月2日、neoAIが事例を公開した。法規制や受講費、申込期限、学年別の漢字まで紙面を多面的に確認し、人が最終判断する前の一次チェックを担う。校正の受付や返却を待つ時間の制約が減り、生まれた時間を企画やクリエイティブの検討に充てるメンバーが増えている。
ベネッセコーポレーションの販促物の校正は、誤字脱字の確認にとどまらない。景品表示法や特定商取引法といった広告の法規制の順守に加え、ブランドを守るための独自の文言、キャンペーン条件、受講費との整合性も見る。教材名、受講費、申込期限、規約、注釈など、顧客が入会前に知っておくべき情報は社内で「オファー」と呼び、学年や時期で内容が変わる。学年に応じた漢字の使い分けもあり、小学1年生向けの紙面なら1年生までに習う漢字を使う。編集担当者が経験で身につけてきた判断も、ルールとして整理した。
従来は、校正者とのやり取りを前提に制作スケジュールを組んでいた。制作担当者や責任者は、本来は顧客に伝わるか、企画として響くかに集中したい立場だが、記載漏れや表記誤りを防ぐ確認にも多くの注意を割いていた。以前に商品制作の領域で試した校正AIは、OCR(文字認識)による読み取りに課題があり、文字の大きさや向き、配置が多様な販促物は、さらに難しいと考えていた。社内では、法務やセキュリティ、個人情報、ITの各部門に確認しながら進めた。未公開の商品情報や独自の校正ルールの外部流出を懸念し、「最終確認は人が行う」役割分担を前提にした。
開発では、さまざまなフォーマットの資料に散在していたオファーの情報を、neoAIが提案した形式に集約した。紙面は構造化して必要なテキストに対象を絞り、学年や校正の種類に応じて参照するルールも絞り込んだ。生成AIが原稿の誤りを先回りして正しく直してしまうと、誤りを捉えられなくなる。補正の基準を両社で言語化し、出力の形式を工夫して、原文を残したまま読み取りを整えた。指摘箇所は、紙面上に誤りの種類に応じた色の枠で示し、番号と指摘内容を対応させた。人の校正者とのやり取りに近い画面にして、制作担当者が慣れた感覚で確認できるようにした。
「ネオポン」という名称は、校正したいものをポンと投げると結果がポンと返ってくるイメージに由来する。最初から完全なものとして扱わず、現場と一緒に育てる考えを込めた。リリース直後は指摘が大量に出て、重要な指摘が分かりにくいとの声があった。そこで、AIが参照したオファーと判断の理由を表示し、検出率と過検知(誤りではない箇所への指摘)の境界を対話ですり合わせた。受講費や申込期限、問い合わせ先など外せない情報は確実に拾い、不要な指摘を減らす調整を続けている。説明会に加え、各事業に担当者を置き、制作現場で隣に座って使い始めを支えた。
プロジェクトは、選定時に約1週間の概念実証(PoC)を行い、正式決定後に約1カ月半でPoCと要件定義を進め、約4カ月でリリースした。現在は、校正が必要な制作物の一部で使っており、neoPONで対応できる校正工程に絞ると利用率は8~9割程度だ。時間帯の制約が減り、必要なときに一次チェックができる。オファーを洗い出して整理したことで、紙面の情報量やWebサイトとの重複を見直す動きも出ている。最終確認は引き続き人が担う。
今後は、顧客の声の分析や、マーケティング企画、制作に必要な情報の抽出など、校正の前後の工程にAIを広げることを検討する。neoAIは、画像や動画へ対象を広げる可能性も挙げる。家庭学習カンパニーブランドコミュニケーション課基盤校正グループの新井典子グループ長は「AIによって業務のスピードと品質を高め、そこで生まれた時間を、子どもたちの学習意欲を高める工夫や、新しい教育価値を考えることへ使いたい」と話している。