福島県いわき市は、会計事務の効率化とペーパーレス化を目的に、インフォマートの電子請求書サービス「BtoBプラットフォーム 請求書」を採用した。12月1日、インフォマートが発表した。年間10万件を超える請求書の処理業務をデジタル化し、最大で年間約1万3000時間の業務時間削減を見込む。今後は小中学校の事務にも適用範囲を拡大し、市全体のDXを推進する方針だ。
いわき市では従来、年間10万件以上の請求書を紙ベースで処理しており、職員の業務負荷が課題となっていた。手入力による転記ミスや記載漏れによる差し戻しが発生し、支払遅延を防ぐためのイレギュラーな対応に追われていた。また、膨大な紙書類の保管には倉庫の賃料などで年間約100万円のコストがかかり、会計検査や情報公開請求に伴う文書の検索や閲覧にも多くの時間と手間を費やしていた。
こうした課題を解決するため、同市は2023年に庁内DX推進部署の主導で実証実験を実施した。その結果、請求処理にかかる作業時間が1件あたり約18分から約10分に短縮される効果を確認できたことから、本格的な導入を決定した。選定にあたっては、インフォマート製品の国内シェアが高く、取引事業者がスムーズに利用できる点を評価した。また、既存の財務会計システムと連携でき、庁内全体の業務効率化が見込める点も決め手となった。事前に実施した事業者アンケートで、約半数が電子請求書の利用に前向きだったことも後押しした。
2025年1月から運用を開始したBtoBプラットフォーム 請求書により、請求書データは財務会計システムに自動連携されるようになった。これにより転記ミスや処理漏れのリスクが低減し、検索性も向上した。事業者側にとっても、請求書発行のための郵送費や来庁の手間が省けるほか、システム上に履歴が残るため、電話連絡などによる認識の齟齬も解消され、やり取りが円滑になっている。
今後は適用範囲をさらに広げ、2025年11月以降は小中学校で発生する消耗品の請求業務などにも利用を拡大する計画だ。年間約1万6000件の取引を電子化し、学校事務と事業者双方の負担軽減を目指す。同市会計室審査係主査は「電子請求書の利用により、行政と事業者双方の利便性向上が図られると期待している。利用事業者の拡大に向け、引き続き普及と啓発に取り組んでいきたい」としている。