西武鉄道は、紙による業務運用から脱却するため、サイボウズの業務改善プラットフォーム「kintone」を全従業員約3600人の市民開発基盤として活用している。大規模利用向けの「ワイドコース」が備えるアプリ分析機能でアプリの利用状況を可視化し、ガバナンスの徹底と活用促進を両立させている。全社利用の開始から約1年で、開発・試行中を含めて1,600を超えるアプリが作られた。10月29日、サイボウズが活用事例として公開した。
西武鉄道の情報システム部は「デジタルネイティブ企業への転進」を長期ビジョンに掲げ、DXの第一歩として紙の運用をデジタル化するデジタイゼーションに取り組んできた。現場ではExcelで作成した書類を印刷して使う場面が多く残っていた。PCを持たない現場の従業員向けにiPadを配布し、Excelデータをタブレットで閲覧・編集できる環境は整えていたものの、同時編集がしにくいなどの課題があった。
同社は、使い勝手の良いシステムは現場が自ら開発し改善していけるものだと考え、ノーコードでアプリケーションを開発できる仕組みを求めた。注目したのが、2023年から一部の部署で導入されていたkintoneだ。その部署では名刺管理システムなど外部システムとの連携が実証されており、全社展開しても幅広い業務に対応できると判断した。DX人材の育成プログラムでkintoneを題材に業務分析からアプリ開発までを実践し、現場主導の業務改善に手応えを得たことも後押しとなり、2025年に全社導入を決めた。
現在は全従業員と協力会社を合わせて約3900のアカウントを契約し、ワイドコースを利用している。本番で使われているアプリケーションは約200、開発・試行中のアプリケーションは約1400にのぼる。20前後ある部ごとに開発用と本番用のスペースを設け、開発用では従業員が自由にアプリケーションを作れる。本番で使う段階になると、情報システム部が入力項目や管理権限の設定を運用ルールに沿ってチェックしたうえで本番スペースへ移す。プラグインは各部の要望を受けて情報システム部が有効性と安全性を確認してから公開しており、60以上が使える。開発パートナーの関東情報サービスがサポートデスクを運営し、問い合わせ対応やアプリケーション開発支援などを担う。
特徴的なのは、ワイドコースの「アプリ分析機能」の使い方だ。データ数やアプリの複雑性を可視化し、半年間更新やレコード作成がないアプリは現場に確認したうえで削除するなど、棚卸しに役立てている。棚卸しの前にはアプリケーション間の参照関係を相関図で確認し、不備を防ぐ。最終ログイン日やアクセス頻度から活用が進んでいない部署を把握して講習会への参加を打診したり、部署内で特に活用しているメンバーに社内展開のキーパーソンとして活動してもらうための施策を立案したりする際にも使っている。
活用例の一つが、協力会社とのやりとりをFAXから移行した作業打合票アプリケーションだ。ゲストアカウントを付与した協力会社が工事内容を登録し、社内の部署が注意事項を追記しながら作業完了までの流れを管理する。全従業員が対象となる輸送の安全教育の受講者管理も、Excelやメールでのやりとりをkintoneに集約した。
同社は、1人が作ったアプリケーションで1日5分の削減効果があれば、20人のチームで使うと1日100分の効率化になるという「1:20理論」を指標に掲げる。紙の削減は着実に進み、従業員の間には自ら業務を変えられるという意識が根付いてきたという。今後は従業員の習熟度に合わせた支援や、社内コミュニティでのコンテンツ発信、事例共有による横展開を強化する。kintoneのAI機能についても、検索を含めた情報アクセスの迅速化など、現場の業務に役立つ場面があれば活用したい考えだ。