ネクスコ・エンジニアリング北海道は、高速道路橋梁の点検業務における安全性向上と効率化を目的に、Liberawareの狭所点検ドローン「IBIS2」を採用した。11月28日、Liberawareが発表した。従来は夜間の通行止めを伴っていた点検作業の一部をドローンに置き換えることで、夜間規制日数を約4割削減した。点検員の身体的負担の軽減や、将来的な人手不足への対応につなげる狙いだ。
ネクスコ・エンジニアリング北海道は、NEXCO東日本が所管する北海道内の約800橋梁の保守点検を担っている。橋梁点検は法令で5年に1回以上の実施が義務付けられているが、従来の手法では橋梁点検車を使用するため、車線規制や夜間通行止めが必要だった。特に北海道エリアは対面通行区間が多く、利用者の少ない夜間に通行止めを行って集中的に作業する必要があり、多くの人員と機材を動員していた。また、橋梁点検車のアームが届かない狭い箇所や密閉空間には点検員が進入して目視確認を行っており、身体的負担や安全面でのリスクも課題となっていた。
そこで同社は、点検業務の省力化と安全性向上を目指し、ドローンの活用を検討した。以前から試験導入していた一般的な小型ドローンでは進入できない狭所への対応が課題となっていたが、障害物に接触しても飛行を継続でき、わずかな隙間にも進入できるIBIS2の性能を評価し、採用を決めた。屋外での利用も想定し、風速毎秒3メートルの環境下でも安定して飛行できる点も選定のポイントになった。
IBIS2の導入により、中空床版の端部や箱桁の内部、水路ボックスといった狭所・閉所での点検作業をドローンで代替することが可能になった。これにより、1年間で実施する夜間通行止め作業の日数を38%(7日間)削減できたとしている。規制を伴わない日中の点検が可能になったことで、道路利用者への影響を最小限に抑えられるようになった。また、点検員が危険な場所に立ち入る必要がなくなり、酸欠事故や転落事故のリスクも解消された。撮影した高解像度映像を後から確認することで、目視点検以上の精度確保にもつながっている。
同社はIBIS2をレンタル形式で導入し、社内で操縦者を育成している。当初4人だった担当者は現在7人に増え、週に1回の訓練を実施して操作技術の向上を図っている。
ネクスコ・エンジニアリング北海道保全事業部保全管理部保全企画課課長代理の南恭兵氏は、「目の前の目標は、点検支援技術だけで1径間(橋脚間の区間)の点検をすべてドローンで完了させることだ。そうすれば橋梁点検車を使わず、本線の規制も減らすことができる」と話す。また、今後の展望として「高速道路の関連施設や土木以外でも、狭くて人が入れない場所の点検に関する相談を受けている。配電設備や天井裏、トンネルの避難坑など、新しい対象物の点検にも取り組みを広げたい」としている。