田辺三菱製薬は、クラウドへの即時移行が困難な創薬系システムの集約を目的に、ハイパーコンバージドインフラ「Nutanix Cloud Platform」とITインフラの従量課金サービス「HPE GreenLake」を採用した。11月27日、システム構築を支援したアルファテック・ソリューションズが発表した。2026年末のデータセンター撤廃に向け、約70のシステムをオンプレミスの仮想化基盤へ移行した。月額課金モデルの活用により、オンプレミス環境でありながらクラウドのような柔軟性とコストの最適化を図っている。
田辺三菱製薬は、2025年12月に田辺ファーマへの商号変更を控えるなど、研究開発型創薬企業としてグローバル展開を加速させている。システム環境については「クラウドファースト」を掲げてパブリッククラウドへの移行を推進しており、既存のデータセンターを2026年末までに撤廃する計画を持っている。しかし、研究開発を支える「創薬系システム」においては、アプリケーションの改修や製薬業界特有のバリデーション(適格性評価)対応が必要となるため、即時のクラウド移行が困難なアプリケーションが約70存在していた。これらの受け皿となる基盤の整備が急務となっていた。
そこで同社は、アプリケーションの改修計画に合わせて段階的に拡張できる「創薬系仮想化基盤」の構築を決断した。採用にあたっては、必要なタイミングで必要な分だけリソースを拡張できるNutanixの特性と、ハードウェアを含むインフラ費用を月額モデルで利用できるHPE GreenLakeの組み合わせを評価した。これにより、初期段階で全システム分のリソースを用意する必要がなくなり、資産を保有せずにコストの平準化が可能になった。
移行プロジェクトでは、アルファテック・ソリューションズが提案した移行ツール「Nutanix Move」を活用した。既存の3層構成の仮想化基盤(VMware環境)から、Nutanix環境への移行をオンラインで実施。ハイパーバイザーにはライセンス無償の「Nutanix AHV」を採用することで、移行コストとランニングコストの抑制を図った。異なる技術基盤への移行だったが、データの同期と切り替えをスムーズに実行し、安全な移行を実現した。
また、製薬業界ではGMP(医薬品の製造管理及び品質管理の基準)などの規制対応が求められる。新基盤の構築においても、データの改ざん防止や監査証跡の記録などを規定した「21 CFR Part 11」への対応が必須だった。アルファテック・ソリューションズはインフラ構築に加え、こうしたバリデーション対応も支援し、規制に適合した環境整備を推進した。
田辺三菱製薬 ITデジタル本部 ITデジタル部の高橋将光氏は、「NutanixとHPE GreenLakeの組み合わせは、クラウドへの橋渡しを担うモダンな基盤を実現し、ハイブリッド環境の理想形を具現化した。インフラ領域の専門家であるアルファテック・ソリューションズが、バリデーション対応など業務範囲を超えて支援してくれたことがプロジェクトの成功要因だ」と話している。