日本特殊陶業は、グローバルなグループ全体のID基盤として、OktaのID管理プラットフォーム「Okta Workforce Identity」を採用した。2月6日、Okta Japanが明らかにした。同プラットフォーム上で提供される機能群により、人事プロビジョニングにおける人為的ミスの100%削減と、運用業務負荷の80%軽減を見込む。ID情報の統合により、M&Aに伴うシステム統合の迅速化や、製造現場におけるセキュリティと利便性の両立を推進する方針だ。
日本特殊陶業は、スパークプラグやセラミックス製品で世界トップシェアを誇る総合メーカー。目下、従来の自動車部品メーカーから、環境やエネルギー、医療などの戦略分野を担うスマートテクノロジー企業への変革を進めている。2023年には英文商号を「Niterra Co., Ltd.」へ変更するなど、グローバルな事業転換を加速させている。
変革の一環として、同社はグループ全体でのDXとIT戦略の強化に着手した。従来、同社のID管理は各拠点が個別にActive Directoryを運用しており、手動管理による運用の断片化が課題となっていた。特に日本では、4月の人事異動時期にIT部門へ膨大な作業負荷がかかり、設定ミスや対応の遅れによるセキュリティリスクも発生していたという。
こうした課題を解決し、スケーラブルで安全な基盤を構築するため、Oktaの採用を決定した。選定にあたっては、複雑なワークフローを自動化できる点や、製造現場に適した認証方法を実現できる柔軟性を評価したとしている。
導入の第一歩として「Okta Universal Directory」を導入し、グループ会社を含む15000人超の従業員情報を一つのリポジトリに集約。人事システムと連携してIDデータを自動同期する仕組みを構築した。
さらに、次のステップとして「Okta Lifecycle Management」と「Okta Workflows」を組み合わせた自動化基盤を構築した。これにより、人事システムの情報が更新されると、従業員の入社から異動、退職に至るまで、アカウントの作成・削除やアクセス権の更新がグローバル組織全体で即座に実行される仕組みを実現している。従来はIT部門が人事データを受け取った後に手作業で登録していたため、作業遅延や登録ミスによるシステムエラーのリスクが避けられなかったが、現在はこれらのフローがシームレスに連携されている。これにより、IT部門はルーチン業務から解放され、より戦略的な課題に集中できるようになったという。
セキュリティ面では、多要素認証(MFA)とパスワードレス認証を実現する「Okta FastPass」を導入した。効果が顕著だったのは、製造現場での環境改善だ。手袋やマスク、ゴーグルを着用する工場の従業員にとって、キーボードによるパスワード入力は大きな負担だったが、生体認証などを活用したパスワードレス化により、安全装備を外さずにシステムへアクセスできるようになった。
また、M&AにおけるIT統合のスピードも向上した。標準化されたガバナンスと自動化により、新たなグループ会社のオンボーディングにかかる期間を大幅に短縮できる体制を整えた。運用面では、中央でポリシーを一元管理しつつ各地域のITチームに管理権限を委譲する「ハブ&スポーク型」のモデルを採用し、統制と柔軟性を両立させている。
日本特殊陶業の上席執行役員でグローバル戦略本部DX戦略室長を務める木村和之氏は、「工場現場でもキーボードに触れたり、安全装備を外したりせずに安全に認証ができることは、まさに私たちが求めていた実用的なイノベーション。Oktaを活用することで、必要な時に適切な人を適切なシステムへ安全につなぐことができる」と評価する。
今後は、Oktaの適用範囲を他のグループ会社へ拡大するとともに、デバイスや場所に応じてアクセス権を動的に制御する仕組みの構築も検討し、さらなる利便性とセキュリティの向上を目指す考えだ。