カシオ計算機は、アドビのデジタルマーケティングソリューション「Adobe Journey Optimizer」を国内で初めて採用した。5月29日、アドビが発表した。導入から2カ月余りで、ECサイトで販売する腕時計の在庫状況をリアルタイムに反映したメール配信を世界15カ国で100施策以上展開し、パーソナライズされた顧客体験を迅速に提供できるようになったという。結果として、マーケティングメール経由のコンバージョン数は前年比で137%増加し、D2C事業の年間売り上げは2020年比で205%成長したとしている。
カシオはこれまでも複数のアドビ製品を導入し、デジタル基盤の整備を進めてきた。18年にアドビの分析アプリケーション「Adobe Analytics」を導入し、20年からグローバル分析基盤として本格的に展開。同年、デジタルコンテンツ管理システム「Adobe Experience Manager」、eコマースプラットフォーム「Adobe Commerce」、テスト&ターゲティングソリューション「Adobe Target」も導入し、顧客との長期的な関係構築を目指した接点づくりを進めてきたという。
従来は、これらのアドビソリューションと他社のマーケティングオートメーションツールを連携させてメールを配信していた。しかし顧客層の多様化と商品ラインアップの拡大が進む中で、顧客ごとの年代やライフスタイルに応じた情報提供を効率的に行う方法が求められていたという。こうした課題の解決策としてAdobe Journey Optimizerの導入を決めた。
Adobe Journey OptimizerはCDP(Customer Data Platform)の「Adobe Experience Platform」を基盤とし、メール配信やプッシュ通知などのコンテンツ設計から配信管理までを単一のアプリケーションでカバーする。カシオは同製品の採用にあたって、既存のアドビソリューション群との親和性の高さ、タイムリーなメール配信施策を実行できること、そして将来的に計画している施策にも対応可能であることを評価した。また、カシオが海外拠点を含めてアドビ製品を共通の業務基盤として活用しており、アドビがそうした取り組みを3年以上にわたり支援してきた実績も採用を後押しした。
カシオはAdobe Journey Optimizerの導入により、顧客のアクションを起点としたメール配信を迅速化できたという。例えば、腕時計の会員登録を行った顧客への即時クーポン配信、商品をカートに入れたまま購入に至らなかった顧客へのリマインド通知、在庫切れ商品の再入荷通知といった施策を展開した。こうした取り組みにより、メールの開封率は35.8%、クリックスルーレート(CTR)は24%、メールからの購買率は64%向上したとしている。
カシオ計算機のデジタルイノベーション本部マーケティングテクノロジー統轄部長である齋藤隆行氏はAdobe Journey Optimizerについて「データを活用して、適切なお客様に、適切なコンテンツを、適切なタイミングで届ける『One to One マーケティング』を効率的に実現できた」と評価。今後の展望として、「トリガーベースに加えて、あらゆるタイミングでさらにお客様に喜んでいただけるようなタイムリーな施策をグローバルで展開することを視野に入れている」とコメントしている。