愛知県教育委員会は、電話相談業務の効率化を目的に、Microsoft Azure AI SpeechとAzure OpenAIを活用した「音声認識・文書作成システム」を採用した。1月20日、導入を支援したアルファテック・ソリューションズが発表した。これまで手書きで行っていた報告書作成を自動化することで、相談員の業務負荷を大幅に軽減し、保護者への対応に注力できる体制を整える。デジタル化されたデータを活用した相談内容の傾向分析や、今後の対応策の検討にもつなげたい考えだ。
愛知県教育委員会は、2021年に策定した「あいちの教育ビジョン2025」に基づき、ICT教育の推進や教職員へのAI搭載PC配布など、教育現場のデジタル化を加速させてきた。現在はハードウェアの整備に続き、ツールを使いこなすための支援や、AI技術による教育DXのさらなる深化を模索している。その一環として、行政組織自体のデジタル変革も重要視しており、アナログ業務が残る部門へのAI適用について2024年度から検討を進めていた。
白羽の矢が立ったのは、保護者からの相談窓口である「家庭教育相談電話」の業務だ。同窓口には、子どもの学習や学校生活、いじめ、不登校など、年間約300件の切実な相談が寄せられる。経験豊富な家庭教育コーディネーターが対応にあたっているが、1件あたりの相談時間が30分以上に及ぶことも多く、その後の事務処理が課題となっていた。
従来、相談員は通話中に取った手書きのメモをもとに、さらに手書きで報告書を作成して共有していた。このアナログな作業は熟練の相談員にとっても大きな負担であり、本来の目的である相談対応の時間に影響を及ぼしていた。また、手書きの報告書はデータの加工や編集が難しく、迅速な情報共有や蓄積された情報の分析が困難であるという課題も抱えていた。
こうした課題を解決するため、愛知県教育委員会はアルファテック・ソリューションズの支援を受け、2025年夏からシステムの構築に着手した。採用されたシステムは、固定電話の通話内容をデジタル録音し、Azure AI Speechで文字起こしを行った後、Azure OpenAIによって文書の整形、要約、定型書式への落とし込みを自動で実行するものだ。
ソリューションの選定にあたっては、愛知県がすでに利用しているMicrosoft製品との親和性や、アカウント管理の一元化が可能な点が評価された。また、録音データをAIの学習に利用しないことや、クラウド上に処理済みのデータを残さないといったセキュリティ要件を満たしていることも採用の決め手となった。開発プロセスでは、追加学習やRAG(検索拡張生成)を用いず、プロンプトの工夫だけで推論精度を高める検証を繰り返し、相談員が満足できる品質の報告書作成を実現した。
2025年12月に本番運用を開始した新システムにより、家庭教育コーディネーターの業務負荷は劇的に軽減される見通しだ。自動作成された正確な記録が残ることで、相談員はより親身な相談対応に集中できるようになった。また、デジタル化された相談記録を月次ミーティングでの傾向分析に活用するなど、相談対応の質を高める取り組みも始まっている。
愛知県教育委員会事務局ICT教育推進課の立木佑典氏は、アルファテック・ソリューションズの提案について、シンプルかつ合理的にやりたいことを具現化するものだったと評価している。手探りの状態から理想に近い形で構築を支援してくれた同社への謝辞を述べるとともに、AIが職員の生産性向上に貢献する可能性を実感していると語る。
今後は、デジタル化によって得られた知見を学校現場へ提供し、新しい気づきを促すなど、組織全体でのDXをさらに加速させる方針だ。あいちの学び推進課の田島浩貴氏は、デジタルデータを効果的に共有し、新しいチャレンジにつなげていきたいと展望を述べている。