千曲バスは、安全運行の強化と脱炭素の推進を目的に、AI(人工知能)を搭載したドライバーモニタリングシステム「Smart Eye AIS」を採用した。3月5日、同システムを提供するマクニカが発表した。新たに導入した電気自動車(EV)バスに同システムを搭載し、ドライバーの状態をリアルタイムで検知することで、事故の未然防止と地域公共交通の安全性向上を目指す。
長野県佐久市に本社を置く千曲バスは、地域公共交通の担い手として路線バスなどを運行している。日本のバス業界全体では現在、ドライバーの不足や高齢化が進む中で、いかに安全な運行を維持し向上させるかが大きな課題となっている。特に路線バスは長時間の運転や単独での乗務が多く、ドライバー自身が体調の変化や集中力の低下を自覚しにくいという側面があった。
千曲バスが拠点とする上田市においても、公共交通の安全性向上を図る機会の創出が求められていた。千曲バス自身も、長距離走行時におけるドライバーの安全確保に課題を感じており、環境負荷の低減と同時に、より安全で安心な輸送サービスを提供するためのIT技術の活用を検討していた。
こうした背景から採用されたSmart Eye AISは、スウェーデンのSmart Eyeが開発した高度なAI解析技術を搭載したカメラシステムだ。車内に設置されたカメラがドライバーの顔の向きや視線、まばたきの状態を継続的にモニタリングし、居眠りや脇見、不注意運転などのリスク行動を高精度に検知する。
今回の取り組みでは、上田市の支援のもと、新たに導入されたEVバスで実証実験を行う。日常生活での走行環境において、AIがドライバーの眠気や散漫な状態を検知し、危険の兆候がある場合にはリアルタイムでアラートを通知する。この検証を通じて事故リスクを未然に防ぐとともに、蓄積されたデータを活用して効率的な安全教育体制の構築につなげたい考えだ。
システムを提供するマクニカは、公共交通や商用車向けにAIを活用したモニタリング技術を長年提供してきた実績がある。Smart Eye AISについては、実車環境における検出精度の高さや信頼性が、安全性を重視する用途に適していると評価している。
今回のEVバスの導入は、上田市の発足20周年を記念した事業の一環でもある。2026年3月6日には、長野県東信地方で初となる大型EVバスの出発式が開催される予定だ。環境に配慮した車両と最新のAI安全技術を組み合わせた次世代の公共交通のあり方を広く周知する機会となる。
AI搭載システムを実装したEVバスは、3月9日から実際の路線での運行を開始する計画だ。千曲バスは、最新技術の導入によって地域住民の足となるバスの信頼性を高め、持続可能な地域交通の実現を図っていく。