静岡市は、市民からの問い合わせ対応の効率化を目的に、カラクリの顧客対応AIエージェント「GeN - Gov Edition」を採用した。3月6日、カスタマーサポート特化型AIを展開するカラクリが発表した。最新の生成AIを活用した「AIコンシェルジュ」を公式ウェブサイトとLINE公式アカウントに設置し、年間17万件を超える電話問い合わせの削減を目指す。
静岡市では年間約2300万PVに達する大規模な公式サイトを運営しているが、行政特有の課題を抱えていた。制度の正式名称が分からない市民が情報にたどり着けず、最終的に市役所やコールセンターへ電話をせざるを得ない「入口の迷い」が生じていた。こうした背景から、市民が日常的な言葉で行政サービスを検索でき、オンライン上で手続きを完結できる窓口の実現が急務となっていた。
今回採用されたGeN - Gov Editionは、自治体向けに特化したAIエージェントだ。最大の特徴は、市民との対話における「聞き返し」機能にある。たとえば「住民票がほしい」といった抽象的な質問に対し、AIが「どなたの分が必要ですか」と問い直すことで、質問者の意図を整理する。これにより、膨大な情報の中から適切な案内ページへ的確に誘導できる。
回答の正確性を担保するため、RAG(検索拡張生成)技術を活用している点も選定のポイントとなった。静岡市の公式サイトに掲載されている情報やPDFファイルのみを参照して回答を生成するため、生成AI特有の事実に基づかない回答を抑制している。これにより、24時間365日、正確な行政案内の提供が可能になった。
システムの中核となる大規模言語モデル(LLM)には、OpenAIの「GPT-4.1mini」を採用した。ゴミの分別判断といった複雑なルールの適用において高い論理性を発揮することに加え、処理スピードとコストパフォーマンスのバランスを評価して選定した。市民は専門用語を知らなくても、LINEやウェブから使い慣れた言葉で質問できるようになり、利便性が向上した。
職員側にも恩恵が見込まれている。定型的な問い合わせの一次回答をAIが担うことで、窓口や電話対応の負担が軽減される。これにより、職員はより複雑な相談業務や専門性の高い業務に注力できるようになる。
2026年3月から開始された本運用では、ゴミの出し方や子育て、補助金申請など生活に密着した幅広い分野を対象としている。今後は利用ログの解析を通じて回答精度の向上を図るとともに、AIで解決できない質問をシームレスにコールセンターへ引き継ぐ仕組みの構築も進める。
将来的には、音声入出力機能の追加や、窓口で職員の業務を支援するAIとしての活用も検討している。静岡市とカラクリは、AIと人が互いに補い合うことで、より使いやすい行政サービスの実現を目指す。