京大病院眼科、生成AIで診療情報提供書作成を効率化

2024年9月9日08:55|ニュースリリース公開日 2024年7月29日|ニュースCaseHUB.News編集部
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 京都大学医学部附属病院眼科は、生成AIを活用した医療文書作成支援システム「CocktailAI」を開発し、2024年5月から運用を開始した。7月29日、Google Cloud Japanが発表した。医師の負担が大きい診療情報提供書の作成業務を効率化し、医師の働き方改革を進めるとともに、患者への医療サービスの質向上を目指す。

 京大病院は、高度な医療技術と研究を兼ね備えた特定機能病院として、多くの患者を紹介する役割を担っている。医師は、質の高い医療の提供に加え、関連病院とのコミュニケーション、教育、研究活動など、多くの業務を抱えている。特に、診療情報提供書など、医師法で作成が義務付けられている医療文書の作成には、多くの時間と労力を費やしていた。

 京大病院眼科は、フィッティングクラウドと共同で、生成AIを活用した医療文書作成支援システムCocktailAIを開発した。これは、過去のカルテ情報などを元に、医師が予め準備した定型文の一部に自動的に文章を作成、挿入する。医師は内容を確認し、必要に応じ修正を加えるだけで、診療情報提供書を作成できる。

 開発にあたり、医療情報漏洩のリスクを考慮し、既存のカルテ情報を用いたAIモデルの学習ではなく、医師が作成するテンプレートに基づいて文章を生成する方式を採用した。これにより、個人情報を厳密に保護しつつ、精度の高い文書生成を実現している。

 CocktailAIは、Google CloudのVertex AIをバックエンドに、MedLM、Gemini 1.0 Pro、Gemini 1.5 Flashの3種類のAIモデルを組み合わせて最適な出力結果を生成する。Google Cloudを採用した理由として、京大病院とGoogle Cloud間で締結されたデジタルトランスフォーメーションに関するパートナー協定に基づく技術サポート体制、そしてデータの蓄積や二次利用を行わないGoogle Cloud側の保証が、医療情報保護の観点から高く評価された。

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システム構成

 運用開始から間もないものの、CocktailAIは眼科の診療情報提供書の作成において、生成された文章の56%が「そのままで利用可能」または「微修正のみで利用可能」、36%が「記載追加のみで利用可能」との結果が出ている。医師の負担軽減と患者への医療サービス向上に手ごたえを感じており、今後は、フィッティングクラウドの親会社であるファインデックスの文書作成システム「DocuMaker」に組み込み、京大病院以外の医療機関への展開も予定している。

 京大病院眼科講師の須田謙史氏は、「使いやすく精度の高いシステムで文書作成業務を効率化することは、医師の働き方改革を推進するだけでなく、ひいては患者さんに提供できる医療水準の向上にもつながります」とコメントしている。