アストロスケールホールディングスは、多言語・多拠点環境下での業務効率化を目的に、マイクロソフトの生成AI「Microsoft 365 Copilot」を採用した。8月18日、導入を支援したソフトクリエイトが発表した。翻訳や議事録作成にかかる作業時間を大幅に短縮し、業務品質の向上にもつなげている。今後は全社員がAIを自然に使いこなす文化の醸成を目指す。
アストロスケールホールディングスは、スペースデブリ(宇宙ごみ)の除去など軌道上サービスの開発をグローバルで展開する宇宙ベンチャー企業。ChatGPTの登場を機に社員から生成AIの活用を求める声が高まる一方、事業の特性上、多くの機密情報を扱うため、セキュリティとガバナンスを確保した上での安全な利用環境の構築が課題となっていた。
同社は複数のツールを比較検討した結果、Microsoft 365 Copilotの採用を決めた。選定にあたり、既に全社で活用していたMicrosoft 365環境との親和性の高さや、テナント内のデータが外部に流出しないデータ保護とセキュリティの仕組みを評価した。また、日々の業務で使い慣れたアプリケーション上で生成AIを利用できるため、導入後の定着が促進されると期待したという。
導入は、有志の社員約10人による小規模なトライアルから開始した。参加者が翻訳や議事録作成、提案書作成など、それぞれの業務で活用法を模索。その成果が社内で共有されることで関心が高まり、利用希望者は60人以上に増加した。その後、ソフトクリエイトの支援で約100人が参加するワークショップを開催し、業務に即した活用法の共有を通じ、全社的な活用の機運を高めた。
現在、アストロスケールホールディングスでは多くの社員が日常業務でMicrosoft 365 Copilotを活用している。特に多言語でのコミュニケーションが多い同社では、翻訳業務の負担軽減効果が大きいという。従来は専門チームに依頼後、2〜3週間の待ち時間が発生することもあったが、一次翻訳などを各自で行えるようになり、業務のスピードが向上した。また、1時間近くを要していた議事録作成が数分で完了するようになるなど、定型的な業務の効率化も進んでいる。
導入から定着に至るプロセスでは、ソフトクリエイトの伴走型支援が有効だったとしている。アストロスケールホールディングス Vice President, Global IT & Securityのピエール・ジャック氏は、「ソフトクリエイトは当社の実情に即して『いかに導入して、どの業務にフィットさせるか』まで一緒に考えてくれた。対話の中からこちらの温度感や悩みを汲み取ってくれる安心感があった」と話している。