カンボジア地雷対策センター(CMAC)は、日本電気(NEC)が開発したAIを活用し、紛争地に残存する地雷埋設エリアの予測実証を行った。10月29日、NECとCMACが共同で発表した。予測精度は、実際に埋設されていた位置との合致率が90%を超える高精度を実現した。これにより、従来は多くの時間と人員を要していた地雷埋設可能性エリアの特定が迅速化され、安全かつ効率的な除去作業につながる。
カンボジアでは1970年代からの内戦により、各地に多数の地雷が残存しており、農地や居住地域の利用を妨げ、復興・開発の大きな障害になっている。カンボジア政府は、1997年に署名したオタワ条約に基づき、2030年までに国内の地雷除去を完了することを目標に掲げており、目標達成に向けてAIなどの先進技術を活用した調査時間の短縮が期待されていた。
今回の実証では、カンボジアの地雷原のうち約100万平方メートルを対象にした。CMACが保有する既に発見された地雷埋設位置の情報や住民からの提供情報、河川・山岳地帯や工場・重要建物の位置などのオープンデータをもとに、NECのAIが有効な情報の選択と分析を行い、地雷埋没の可能性が高いエリアを高精度に予測した。
このAI活用により、従来は膨大かつ未整理の情報をもとに、多くの人が時間をかけて行っていた地雷埋設可能性エリアの特定を、少ない人員で迅速に行うことが可能になり、迅速かつ効率的な地雷除去を支援できる可能性が実証された。
この取り組みは、地雷対策に関わる新技術の研究開発支援などを行うジュネーブ人道的地雷除去国際センター(GICHD)主催の「The GICHD Innovation Award 2025」において、「Improving the accuracy of estimating explosive ordinance hazardous areas」分野で1位を獲得している。
今後、AIのさらなる精度向上に努めるとともに、CMACとともに日本政府と国際協力機構(JICA)などの国際機関との連携を強化しながら、カンボジアにおける2030年の地雷除去完了に向けて取り組みを加速させていく。