岡喜牧場は、牛の起立困難を予防する声かけAIサービス「BUJIDAS」を採用した。3月16日、BUJIDASを共同提供するNTTテクノクロスとベルシステム24が発表した。滋賀県を拠点とする近江牛の飼育業者として同サービスを導入するのは初めてだ。最新のAI技術を活用することで、出荷直前の死亡事故の原因となる起立困難を未然に防ぎ、伝統ある畜産経営の安定化と現場の作業負担軽減を図る。
滋賀県竜王町で約60年にわたり黒毛和牛の肥育を行う岡喜牧場は、「牛にとって快適な環境づくりが、良質な肉づくりにつながる」という理念を掲げ、地域ブランド「岡喜和牛」を展開している。同牧場では、牛が自力で起き上がれなくなる起立困難の事象が年に数回発生していた。起立困難は、体内で発生したガスが横隔膜を圧迫して呼吸困難に陥るなどの事故につながるため、早期発見と迅速な対応が不可欠だ。しかし、広大な牧場内を人手だけで常時見回るには限界があり、見逃しのリスクや作業負担の増大が長年の課題となっていた。
こうした課題を解決するため、同牧場はセンサー型の監視システムの導入を検討した。しかし、センサーの着脱作業が牛と人の双方に負担をかけることや、システム登録などの運用負荷がネックとなり、従来の体制では対応が困難だと判断し導入を見送っていた。
今回採用されたBUJIDASは、ネットワークカメラとAIを用いて牛舎を監視する非接触型のサービス。AIカメラが起立困難につながる牛の危険な姿勢を検知すると、カメラから音を発報し、その音に反応した牛が自ら姿勢を変えることで事故を予防する仕組みだ。センサーの装着が不要で複雑な設定も必要ないため、現場の負担を増やさずに24時間体制の見守りが可能になる点を高く評価した。また、非接触型であるため牛にストレスを与えず、アニマルウェルフェア(動物福祉)にも配慮できる点が決め手となった。
導入後の効果として、精神的な不安の解消が挙げられている。従来は毎朝、起立困難が発生していないか懸念しながら見回りを行っていたが、システムが24時間365日稼働することで大きな安心感を得られている。AIは人とは異なり異常を見逃さないため、牧場を離れる際も気兼ねなく過ごせるようになっている。
岡喜牧場の久康弘牧場長は、毎朝心配しながら牛舎を見回っていたが、BUJIDASの導入により大きな安心感を得ることができたと話す。人と違って異常を見逃すこともないため、牧場を離れなければならない際でも気兼ねなく過ごせるようになった。起立困難を未然に防げればという思いで導入したが、期待以上の効果を実感しているという。