ファンケルは、モビルスが提供するAIチャットエージェント「MOBI BOT GenAI」のVector Search機能を本格採用した。9月17日、モビルスが発表した。公式通販サイトのFAQサイトおよびLINE公式アカウントのチャットサポートに適用し、2026年1月から運用を開始している。利用者の自己解決率が、従来のチャットボット比で約30%向上したほか、メンテナンス時間を従来の最大1週間から1時間へと短縮した。今後は蓄積した問い合わせ理由を分析し、顧客の声(VOC)の全社的な活用を進める。
化粧品や健康食品を展開するファンケルは、2035年に向けた長期経営構想において「お客さまから最も信頼され、選ばれ続けるブランド」を掲げている。その一環として、コンタクトセンターを単なる困りごとの解消窓口にとどめず、豊かな体験価値を提供する場へと進化させる取り組みを進めている。同社の顧客層では問い合わせ手段が電話からWebチャットやLINEなどのノンボイスチャネルへと移行しつつあり、デジタル接点の拡充が急務となっていた。
従来のチャットサポートでは、選択式のシナリオ型やキーワード一致型の検索を採用していた。しかし、利用者が自由な文章や類似語で質問した場合に適切な回答を提示できず、途中で離脱して電話窓口や有人チャットへ流入するケースが発生していた。また、膨大な商品数や頻繁に展開するキャンペーンに合わせ、複雑なシナリオの作成、修正、検証作業を繰り返す必要があり、担当者の運用管理負荷が増大していた。
こうした課題を解消するため、ファンケルは自然文の意図を汲み取れる新たな仕組みの検討を開始した。肌や健康に関わる相談を扱うため、生成AI特有の誤回答(ハルシネーション)を回避し、確実なFAQ情報から回答できる点に着目してMOBI BOT GenAIの選定に至った。2025年12月に実施した実証実験(PoC)で検索精度の向上や有人窓口への連携低減を確認できたことから、2026年1月より正式運用へ移行した。
新システムでは、Vector Search(ベクトル検索)技術により、表記ゆれや同義語、長文の質問に対しても文脈を理解して最適な回答を検索・提示する。運用の面でも、既存FAQサイトの約630件のデータをCSVでインポートし、検索対象として登録する運用に切り替えた。一部を除き、従来のシナリオ型運用を廃止した。
導入後は、利用者の自己解決率が、従来のチャットボット比で約30%向上した。終了後アンケートでも好意的な評価が増加しているという。また、チャットボットから有人窓口へ引き継ぐ際、利用者が入力した質問内容を事前に把握できるようになり、オペレーターの心理的負担の軽減にも寄与している。管理面では、毎月の更新作業にかかる時間が最大1週間から約1時間へと圧縮され、AIの学習処理自体も数分で完了するなど、運用負荷の軽減と生産性向上を果たした。
ファンケル カスタマーサービス本部 CXデザイン部 デジタルデザイングループの川崎純子氏は、「肌や健康に関わる領域のため、ハルシネーションリスクを回避できる確実な検索精度が決め手だった。自己解決率が向上し、運用負荷も改善した。今後は蓄積されるお問い合わせ理由を分析し、全社的なVOC活用へ貢献していきたい」と話す。同グループの原園早由里氏は、「創出した時間を単なるコスト削減で終わらせず、オペレーターの自己研鑽や教育に充て、新たなブランド体験につなげることが真のゴールだ」とコメントしている。