世田谷区は、職員の業務改革を加速させるため、次世代AIワークスペース「Genspark」を採用した。3月26日、Gensparkが発表した。自治体による同ソリューションの導入は国内で初。AIエージェント機能を活用して事務作業を一気通貫で支援し、限られた人員で多様化する行政課題に対応できる体制の構築を目指す。
世田谷区はこれまでも複数の生成AIを利用してきたが、その活用は個別タスクの補助にとどまっていた。一方、行政現場では調査や情報収集、論点整理、資料作成といった定型業務が大きな割合を占めており、これらの効率化が喫緊の課題となっていた。創出された時間を、政策立案や住民対応といった対人業務などのコア業務へシフトさせることが急務だった。
Gensparkの採用にあたり、目的を指示するだけでAIが自律的にタスクを分解し、情報収集から資料作成までを完結させる「AIエージェント機能」を中核に備えている点を評価した。ChatGPTやGemini、Claudeなど70以上のAIモデルを統合しており、ユーザーがモデルの使い分けを意識することなく、最適なものが自動で選択・連携されるため、職員の負担を大幅に軽減できると判断した。また、行政機関に求められるエンタープライズ水準のセキュリティが担保されている点も決め手となった。
今回の試行導入では、DX推進担当課と公募により選定された計70名で検証を開始する。世田谷区が過去に実施した単一モデルの対話型AI利用データに基づくと、70名の利用だけでも年間約2000から2600時間の業務時間削減が見込まれる。これは金額換算で約1040万から1380万円相当にのぼり、導入コストに対して最大1.82倍の効果を期待している。
さらに、将来的に全庁約150課へ展開し、計1500名の職員が日常的に活用する体制を整備した場合、年間約2.1万から3.9万時間の業務時間が創出されると試算している。金額換算では約1.1億から2.1億円規模となり、想定される導入コストに対して7から13倍という高い投資対効果(ROI)が見込まれる。
導入ステップとしては、2026年4月から7月にかけ実業務での利用と効果測定を実施する。時間削減の実測や品質評価を行い、8月に成果を取りまとめ、9月の評価を経て2027年度以降の全庁展開を判断する予定だ。具体的な利用目的を持つ職員のほか、EBPM(エビデンスに基づく政策立案)への活用可能性を見据え、課長級を中心とした管理職も利用対象に含めている。
効果測定は定量・定性の両面で行う。組織全体でコスト以上の効果を出すことを目標とし、週ごとの利用者数や実際の業務での活用度を重要な指標として計測する。定性面では、資料の品質向上や住民対応の迅速化といった個別KPIの達成度を総合的に評価していく。
世田谷区DX推進担当課の深山氏、下岡氏、川嶋氏は、「新たな技術を適切に取り入れながらDXを推進してきた。今回の導入もその一環であり、AIエージェントの活用可能性を実務の中で具体的に検証していく。業務の効率化だけでなく、職員がより本質的な課題解決や区民対応に力を注げる環境づくりにつなげられるよう、効果を見極めながら着実に活用を進めていく」とコメントしている。