タカラスタンダード、AIで不適切経費を自動検知 4000人の申請チェックを効率化し統制強化

2025年12月24日17:56|ニュースCaseHUB.News編集部
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 タカラスタンダードは、経費精算におけるチェック精度の向上と業務負担の軽減を目的に、ChillStackの不正経費自動検知クラウド「Stena Expense」を採用した。12月24日、ChillStackが発表した。約4000人の従業員による経費申請をAIで網羅的に解析し、交通費の重複や不適切な利用を自動で抽出する。これにより、経理部門の事後チェック業務を効率化するとともに、全社的な内部統制の強化につなげる。

 タカラスタンダードは、キッチンや浴室などの住宅設備機器を製造・販売する大手メーカー。2021年に経費精算クラウドシステムを採用し、モバイル端末や法人カードでの申請環境を整備するとともに、承認フローを上長による1段階承認へ簡素化して工数削減を進めてきた。しかし、承認後の事後チェックが経理部門に集中する構造となり、新たな業務負荷が課題となっていた。また、コロナ禍の収束に伴う営業活動の活発化で申請件数が増加し、目視による人的なチェックだけでは精度維持が困難になっていた。

 同社は、既存の経費精算システムを維持したまま連携できるStena Expenseの採用を決めた。選定にあたり、システム改修が不要でCSVデータの取り込みだけで運用を開始できる導入ハードルの低さを評価した。また、サブスクリプション型でスモールスタートが可能だったことも、社内での「初めてのAI活用」を後押しした。機能面では、単一のチェックだけでなく、統計的なアプローチでデータ全体を俯瞰して異常の兆候を把握できる点を重視した。

 新システムの活用により、重複申請や不適切な申請に対する検知精度が大幅に向上した。特に交通費の往復・片道申請の重複など、目視では見落としがちなケースをAIが自動抽出できるようになったため、確認作業のスピードと精度が改善された。また、勘定科目や社員別に申請頻度を比較する「異常モデル分析」により、入力誤りや不適切な利用の兆候も早期に把握可能となった。これらの検知結果は、領収書の添付漏れ防止といった運用ルールの見直しや、社内システム改修の判断材料としても活用されている。

 今後は、分析レポート作成の自動化をさらに進め、さらなる業務効率化を図る方針だ。また、AIの検知結果を事業所単位でも共有し、現場レベルでの統制意識を高めていく。タカラスタンダード監査室マネジャーの梶谷宝稔氏は、Stena Expenseの活用により重複申請や不適切な申請の検知精度が大幅に向上したと評価する。確認作業の精度とスピードの両面で大幅な改善がなされており、AIが検知できるという認識が社内に浸透することで、従業員一人ひとりの意識向上や内部統制の強化にも寄与していると話している。今後はAIを通じた透明性とガバナンスの両立を全社的に実現していきたい考えだ。

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