三井化学は、学術文献や研究報告書に記載された化学構造式から化合物情報を自律的に抽出する生成AIエージェントシステムを独自に開発した。3月2日、三井化学が発表した。研究開発における文献調査時間を80%以上削減できることを確認しており、2026年度からの本格運用を目指す。複雑な情報収集の自動化により、研究者がより創造的な活動に注力できる環境を整える。
化学分野の研究開発では、特許文献や学術論文から化合物の用途、物性、製造方法などを調査する作業が不可欠だ。しかし、高分子や有機化合物は構造が複雑なため、構造式を見ただけで正確な化合物名を特定することは専門家でも困難な場合が多い。従来、研究者は膨大な文献を一つずつ確認し、構造式と化合物名の対応関係を手作業で調べる必要があり、多大な時間と労力が課題となっていた。
三井化学はこの課題を解決するため、生成AIエージェントに自社の研究者や技術者が持つ化学の専門知識を組み合わせた独自のシステムを開発した。これまでAIによる読み取りが困難だった化学構造式の解析を可能にした点が大きな特徴だ。AIエージェントが文献内の画像情報とテキスト情報を統合的に活用し、化合物に関する情報を自律的に判断して抽出する。
新システムは、化合物名の特定にとどまらず、文献に記載された用途、物性、製造方法、実験条件といった関連情報も同時に取得できる。さらに必要に応じて化学データベースやWeb検索情報を参照することで、より包括的な化合物情報を出力する仕組みだ。研究者のニーズに合わせたレポート作成機能も備えており、調査結果を整理された形式で出力することで、後続の分析作業や意思決定を迅速化できる。
社内での初期検証の結果、本システムを活用した文献調査では、研究者の調査時間が80%以上削減される効果を確認した。従来は1カ月程度を要していた調査が1日程度に短縮された。この成果を受け、三井化学は2025年度内に実証実験を完了させる。
同社は今後も最先端のデジタル技術を活用し、化学の力で社会課題を解決することを目指す。多様な価値の創造を通じて、持続可能な社会への貢献を推進していく方針だ。