テレビ朝日、動画生成AI「Veo」で番組制作変革へ 全社コンテスト通じAI活用の文化を醸成

2026年3月18日09:00|ニュースCaseHUB.News編集部
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 テレビ朝日は、番組制作における創造性の向上と業務効率化を目的に、Google Cloudの動画生成AIモデル「Veo」を採用した。3月9日、Google Cloud Japanが発表した。社内イベント「生成AI動画コンテスト」の開催を通じて、社員のAIリテラシー向上と実務への活用可能性を検証したという。今後は地上波放送での実運用も視野に入れ、クリエイティブとテクノロジーが融合した新しいコンテンツ制作を目指す方針だ。

 テレビ朝日は現在、放送事業を核に配信やイベント、海外展開など多角的に事業を広げる「360°戦略」を推進している。その成長戦略の柱としてAI活用を掲げており、2025年夏には専門部署である「AI推進部」を設立。AIが実際のコンテンツ制作にどう寄与するかを社員が具体的にイメージすることや、著作権などのリスク管理への理解を深めることが課題となっていたという。

 そこで同社は参加型のコンテスト形式による学習機会を設けた。ツールの核として採用したVeoは、映像クオリティの高さに加え、商用利用における権利関係が明確であることを評価したとしている。プロンプトを入力するだけで、人物の動きや環境音を含む高精細な映像を数分で生成できる点が、従来の制作フローを抜本的に変える可能性を持つと判断した。

 導入にあたっては、放送局としてのガバナンスを担保しつつ、表現を意図通りにコントロールするための工夫を凝らした。「Vertex AI」や「Google Cloud Storage」を活用し、AIが理解しやすいようプロンプトを構造化する機能や、生成ログを管理する機能を備えた社内専用ツールを開発。AI推進部とデータソリューションセンターのメンバーが伴走者となり、技術サポートや著作権ガイドラインの遵守を個別に指導する体制を整えた。

 2025年6月から8月にかけて実施されたコンテストには、現場のクリエイターからバックオフィス部門まで、部署を超えて50以上の作品が集まった。中には実写と判別がつかないほどのリアリティを持つ作品も登場し、社内で大きな反響を呼んだという。この取り組みにより、AIを「自分たちの武器」として捉える文化が社内に浸透し、AI利用への心理的ハードルが大幅に低下したとしている。

 インフラ面では、Vertex AIのプラットフォームとしての信頼性を評価している。アカウント管理や課金の安定性、ログ管理によるコストコントロールが可能な仕組みにより、企業として安全にAI活用を推進できる基盤が構築された。現在は、ドラマの背景映像の補完やバラエティ番組の再現VTR制作など、地上波放送での具体的な活用に向けた検討が進んでいる。

 同社ビジネスソリューション本部インターネット戦略局AI推進部の小俣慎太郎氏は「単にAIを使ってくださいと促すだけでは浸透しない。受動的な学びではなく、参加型のコンテストにすることで自発的に理解を深めてもらう仕掛けとした。コンテンツ作りを楽しみながら、AIを扱う力と安全に利用するポイントをマスターしてもらうことが目的だった」としている。

 また、ビジネスソリューション本部インターネット戦略局データソリューションセンターの皆木渓夏氏は「目指しているのは、AIを単なる効率化のツールではなく、社員の発想を広げるパートナーにすることだ。クリエイターがより創造的な仕事に時間を割ける環境を作り、テクノロジーとの融合によって新しいコンテンツを届けていきたい」と話している。

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