オルビスは、オンラインにおける顧客体験の向上を目的に、カラクリの高機能AIチャットボット「KARAKURI chatbot」を公式オンラインショップに採用した。9月18日、同サービスを提供するカラクリが発表した。顧客の問い合わせ対応だけでなく、購入前の不安や疑問を解消するデジタル接客チャネルとして活用することで、顧客満足度の飛躍的な向上につなげ、業務効率化も同時に実現した。
オルビスは1987年創業のビューティーブランドで、スキンケアを中心とした商品を展開している。創業以来、徹底した顧客視点でビジネスを続け、通信販売を主軸としてきた。現在は、通販事業における売上の約8割をECが占めており、顧客との主な接点がオンラインへと移行している。
こうした事業環境の変化に対応するため、同社はオンライン上での顧客体験価値を高める新たな取り組みを検討していた。従来、顧客は問い合わせフォームや電話に頼ることが多く、スムーズな顧客体験の妨げとなっていた。また、チャットボットの運用を外部に委託していたため、柔軟なチューニングが難しいことも課題だった。
そこでオルビスは、自社で継続的に改善できる体制の構築を目指し、KARAKURI chatbotの導入を決めた。直感的に使える管理画面や、柔軟なシナリオ設計、効果測定がしやすい分析機能などを評価した。さらに、顧客の閲覧ページや行動から困りごとを察知し、AIが自動で適切な質問をサジェストする機能「KARAKURI hello」も活用。まるで「美容のパーソナルトレーナー」のような、一人ひとりに寄り添うデジタル接客の実現を目指した。
KARAKURI chatbotの導入に際し、オルビスは2023年10月にPoCを実施。特に、購入前の多様な悩みにAIがどこまで自然に応答できるかを重視し検証した。その結果、情報が十分に整備されていない商品ページでも、チャットを通じて納得感のあるコミュニケーションが成立し、満足度が大きく損なわれないことを確認した。これまで拾いきれなかった顧客の声に応えられる可能性に手応えを感じ、本格導入に至った。
この取り組みにより、顧客満足度はPoC期間中に61%から78%へと向上し、2025年7月時点では約83%まで伸長している。この背景には、チャットボットが商品情報のばらつきを補完できたことが大きい。情報が不足している商品に対しても自然な対話で疑問に答え、「サポートしてくれる安心感」が顧客体験価値につながったと分析している。
また、チャットボットを通じて日々蓄積されるVoC(Voice of Customer:お客様の声)を分析することで、これまで見えなかった課題が明らかになった。オルビスでは、VoCと購買導線の相関関係を一目で把握できる「VoC世界地図」を独自に構築。これにより、購入プロセス全体に点在する「つまずきの連鎖」を可視化できるようになった。
VoCデータを活用した改善活動では、ポイントや定期契約に関する問い合わせが減少したほか、新商品の詳細ページ改善にも役立てている。リリース直後の5日間で集まった顧客の声を分析し、伝わりにくい表現などを速やかにクリエイティブに反映することで、カート投入率が前年同月比で約4ポイント向上した。
オルビスのCX統括部 部長である田村陽平氏は、「お客様の声、つまりVoCは、施策の優先順位を判断する上で非常に重要な判断材料になる。今後はアプリにおいても、VOCを起点にしたグロースハックの仕組みを構築していきたい」と話している。