オークラアクトシティホテル浜松は、限られた人員でのサービス品質維持を目的に、ライブコミュニケーションプラットフォーム「Buddycom」を採用した。3月31日、Buddycomを提供するサイエンスアーツが発表した。超高層ホテル特有の構造的課題を解消し、部門やフロアをまたぐリアルタイムな情報共有体制を構築した。これにより、現場の対応スピード向上と業務負担の軽減を目指す。
同ホテルは浜松駅前に位置する44階建ての超高層・大規模ホテルだ。客室や宴会場、ダイニングなどの主要機能が縦方向に広がる構造のため、フロアをまたぐ移動や部門間連携が頻繁に発生する。従来はインカムと館内電話用スマートフォンを併用していたが、連絡手段が分散していることに加え、Wi-Fi運用による電波の途切れが課題となっていた。特に階層間の情報伝達にタイムラグが生じ、スタッフがエレベーターで何度も行き来するなど、オペレーションの効率低下を招いていた。
こうした背景から、同ホテルはモバイル通信を利用できるBuddycomの導入を決定した。選定にあたっては、SIMを活用することで館内外のどこにいても確実に音声が届く通信安定性を評価した。導入後は、フロント、清掃、客室、レストランといったセクションごとのグループに加え、緊急時や全体連携用のグループを作成。館内全体で迅速に情報を共有できる環境を整えた。
導入効果は多岐にわたる。フロントで受けた「清掃優先度の変更」や「アレルギー情報」といった緊急度の高いリクエストは、即座に清掃担当やヘッドオフィスへ共有されるようになった。ベルボーイとの連携でも、移動中のスタッフとリアルタイムで連絡が取れるため、備品の追加依頼やトラブルへのリカバリー対応にかかる時間が短縮された。これにより、エレベーター移動によるタイムラグや無駄な往復が削減されている。
また、館外業務であるケータリングにおいても効果を発揮している。以前は館内に通信範囲が限定されていたが、現在は配送車の中からでも館内と同じ感覚で指示や状況報告が可能になった。レストラン業務では、ホールと厨房の間で「料理の追加」や「進行状況の把握」といった細かな指示をBuddycomに集約。手段が分散していたことによる伝達漏れを防ぎ、サービス提供の安定化につなげている。
宿泊業界では、訪日外国人旅行客の増加の一方で、就業人口がコロナ前の水準まで回復しておらず、人手不足が深刻な社会課題となっている。同ホテルは、Buddycomを単なる連絡ツールではなく、限られた人員で「おもてなし品質」を守るための運営基盤として位置づけている。
今後は、音声データを活用したAI分析や現場状況の可視化を通じ、業務改善や教育支援、リスク対応の強化を進める方針だ。また、カスタマーハラスメント対策など、現場スタッフの安全を守る仕組みとしても活用を広げ、持続可能なサービス提供体制の構築を推進していくとしている。