トヨタ自動車は、車載コンピュータ(ECU)の設計・開発プロセスの効率化を目的に、富士通の量子インスパイアード技術「デジタルアニーラ」とAIを活用した新システムを採用した。1月14日、トヨタシステムズと富士通が発表した。自動車業界で初めてコネクタピンの配置設計の自動化に成功した。設計業務の属人化を解消し、開発スピードと品質の向上につなげる狙いだ。
モビリティ産業において、製品開発の持続可能性や、複雑化するソフトウェア・ハードウェア設計への対応は急務となっている。しかし、それらを担う高度な専門人材の不足が深刻な課題となっていた。特にECUと外部機器を接続するコネクタピンの配置設計は、100ピンの端子配列において理論上9.3×10の157乗通りという膨大な組み合わせが存在する。これまでは熟練技術者の知見に頼る部分が大きく、配置検討に要する時間の長期化や業務の属人化が課題だった。
こうした背景から、トヨタ自動車は設計基準や知見を提供し、トヨタシステムズのインフラ知見と富士通のコンピューティング技術を組み合わせて自動化に取り組んだ。採用されたデジタルアニーラは、量子コンピュータの特性をデジタル回路で模した技術で、膨大な選択肢から最適解を高速に導き出す能力を持つ。
今回の取り組みでは、まず熟練技術者が行ってきた配置パターンとその評価をスコア化した情報をAIモデルに学習させた。そのAIモデルを数式情報に変換し、デジタルアニーラで高速に計算処理を行うことで、最適なコネクタピン配置を自動で算出する仕組みを構築した。

新システムの導入により、設計の処理速度は従来手法と比較して20倍以上に向上した。トヨタ自動車では2025年5月から、量産型ECUを対象に実業務での適用を開始している。従来の手法と並行して運用することで、実効性を検証しながら段階的に移行を進めている。
今後は、本仕組みの適用範囲を拡大することで、さらなるコスト低減と開発サイクルの短縮を目指す。トヨタシステムズは、この自動化技術をトヨタグループだけでなくサプライヤー企業にも展開し、グループ全体のモノづくりにおけるデジタル化を推進する方針だ。