丸紅は、食料・アグリ部門の営業システム基盤として、インフォコムが開発を推進する国産ERP「GRANDIT」を採用した。5月19日、システム導入を支援した双日テックイノベーションが発表した。SAPの2027年問題への対応を契機に、約40年にわたり運用してきた旧営業システムを全面刷新した。過度なアドオンを抑制して業務の標準化を進めたことで、開発コストの削減とシステム品質の担保を両立させたほか、意思決定の迅速化も果たしている。
丸紅は国内外に広がるネットワークを介して多角的に事業を展開する総合商社だ。なかでも食料・アグリ部門は農業資材から食品原料、製品流通に至るサプライチェーンを構築し、食の安定供給を支える中核事業の一つとなっている。
同社では、基幹システムであるSAP ECCの標準保守期限が終了する問題に対処するため、丸紅本体の10営業本部と国内グループの20事業会社を対象に、GRANDITへ移行させる大規模なプロジェクトを展開している。2023年10月には当時の化学品本部向けに同製品を本稼働させており、今回の食料・アグリ部門への導入はこれに続く取り組みとなる。
同部門ではスクラッチで独自開発した営業システムを長年活用してきたが、固有の業務要件に合わせたカスタマイズやアドオンが積み重なったことで、保守・運用の負担が増大していた。基本設計の老朽化によってビジネス環境の変化への対応が難しくなっていたほか、システムの全体構成を把握できる人材が減少していたこともあり、リプレイスが急務となっていた。
システム選定にあたっては、GRANDITが商社特有の業務や貿易実務に精通したノウハウを標準搭載しており、丸紅の業務と高い適合性を示した点を評価した。また、先行した化学品本部への導入ノウハウをテンプレート化した「丸紅版GRANDIT」をベースに活用できるため、同部門固有の機能開発にリソースを集中でき、導入期間の短縮やコスト抑制が見込めることも決め手となった。
プロジェクトの推進にあたっては、システムの標準機能に合わせて業務プロセスを見直す「Fit to Standard」を方針に掲げた。利用部門である営業部員も検討会に毎月数回参加し、システム課と一体となって合意形成を図りながら業務の標準化を進めた。これにより、双日テックイノベーションが持つ商社業務の知見も生かしながら、計画通りに構築を完了させた。
新システムの導入により、ゼロから開発するよりも費用を削減し、システムの高い品質を維持することに成功した。保守・運用の面では、毎朝の起動作業や紙のチェックリストによるバッチ処理結果の記録といった手作業がほぼ不要になり、担当者の業務負担が軽減された。また、承認業務がワークフロー化されたことで、スマートフォンやタブレットからも案件のステータス確認や承認が可能となり、意思決定が迅速化された。
ユーザーを対象に実施したアンケートでは、シングルサインオンによるスムーズな利用や、画面の視認性向上、直感的な操作性などが高く評価されている。丸紅は今後、この成功事例をベースとして、まだ移行を終えていない他の営業部門やグループ企業へのGRANDITの展開を能動的に進めていく。