富士通、Google Cloudで開発基盤にAI導入 法令改修を3人月から4時間に短縮

2026年5月21日23:13|ニュースCaseHUB.News編集部
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 富士通は、行政や医療など法律に基づく社会インフラシステムの改修プロセスの革新を目的に、Google Cloudの生成AI技術および「Gemini CLI」を採用した。5月19日、Google Cloudが発表した。膨大な法令文書の解釈から設計、製造、テストまでを一気通貫で自動化する社内開発基盤「AI-Driven Software Development Platform(AI-Driven SDP)」にこれらの知見を投入した。検証では従来3人月を要していた改修期間を4時間に短縮するなどの効果を確認しており、今後はさらなる品質向上と他分野への展開を進める。

 富士通が開発を担う社会インフラシステムは、定期的な法改正に伴うシステム改修を迅速に行う必要がある。たとえば医療分野では2年に1度の診療報酬改定があり、段階的に詳細化される法令文書をわずか3カ月でシステムへ反映しなければならない。対象となる法令文書は800から900ページに及び、これを読み解いて正しく設計・実装するには、高度な開発スキルだけでなく長年の経験に基づく深い業務知識が必要となる。しかし、この判断ができる人材は一部のベテランエンジニアに限られており、ノウハウが「暗黙知」として属人化していることが全社的な構造課題になっていた。

 この課題を解決するため、同社は全社横断プロジェクト「Takane Driven Initiative」を発足させ、AIが開発工程を担う自動化基盤の開発に着手した。その知見探索の場として、Google Cloudが提供する技術検証ワークショップ「Tech Acceleration Program(TAP)」を活用した。

 Geminiに注目した理由は、ソースコードの膨大な記述量に耐えうる圧倒的なコンテキストの長さを持っていたことだ。さらに、ターミナル環境で扱えるGemini CLIを採用することで、ベテランの対話的なやり取りを通じた暗黙知の抽出・言語化アプローチに最適だと判断した。

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AI-Driven Software Development Platform の全体

 TAPでの3日間の検証プロセスでは、過去の法改正案件を題材に、法令文書とソースコードの読み込みから実装方針の言語化までを段階的に試行した。当初は期待通りのコードを出力できなかったが、対話を通じて「なぜ正解にたどり着けなかったのか」をAI自身に考察させ、不足していた知識を体系的に洗い出す4段階のアプローチを確立した。この言語化された知識を段階的に投入する手法(Few-shot prompting)により、出力精度を大幅に向上させることに成功した。

 導入効果は開発期間の短縮にとどまらず、社内エンジニアのマインド変革にも及んでいる。AIに正しく教えるための言語化手法が組織内でノウハウとして共有されたことで、ベテランの経験に頼らずに暗黙知を抽出して活用できる次世代のAIエンジニアが育ち始めている。

 今後の課題として、社会システムに必須となる「出力の再現性」を担保するため、AIの間違ったアウトプットを検知して軌道修正する仕組みの整備を進める。

 富士通AI Innovation Centerの小副川健氏は、「AIをシステム開発の主役として据える裏には、暗黙知を地道に言語化して蓄えさせるという徹底した準備がある。一足飛びではなくこの地道な作業の大切さを社内に広め、今後も社会システムに求められる品質と再現性を満たすAIドリブン開発の在り方を追求していきたい」と話している。

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