福岡県北九州市の運送会社、丸勢運輸は、サイボウズの業務改善プラットフォーム「kintone」で、紙とExcelに依存していた給与と歩合給の計算を仕組み化した。給与計算まわりの作業は、月140時間減り、ドライバーの歩合給の集計は、丸2日から、確認を含めて約10分に縮んだ。10月16日、サイボウズが事例を公開した。
丸勢運輸は、1969年創業で、1台のトラックを丸ごと1荷主に貸し出す「チャーター便」に特化し、80台前後の自社車両で、幹線輸送と地場輸送を手がける。バックオフィスは、紙とExcelへの依存が重かった。事務職員の勤怠は、紙のタイムシートを、総務部の3人が毎日打ち込み、ダブルチェックしていた。ドライバーの歩合給は、長距離ドライバー70人超を対象に、複雑な計算をExcelで処理し、毎月丸2日を費やしていた。給与計算のマニュアルはなく、計算の中身は担当者の頭の中にしかなかった。Excelの数式を修正できるのは、実質的に作成者だけで、誰かが誤って書き換えると、業務が止まるリスクもあった。総務部の中核を担う担当者の休職が決まり、担当者が抜けても業務が止まらない、引き継ぎ不要の仕組みを、限られた期間で作ることが、最優先になった。
システム担当の逸見耀一氏は、最初、別の開発ツールで内製化を試みたが、細かな処理にコーディングが必要で、管理できるのは自分だけだった。複数のサービスを比べ、kintoneを選んだ決め手は3つある。ノーコードとコーディングのバランス、カスタマイズ言語のJavaScriptが、教材が多く、後任を育てやすい点、商談の段階から、自社の業務での使い方を具体的に示された点だ。導入の範囲は、100人を超えるドライバー全員ではなく、まず事務所の業務に絞った。運行の記録にはデジタルタコグラフ、点呼にはAI点呼システムを使っており、運行管理と点呼は専用の機器に任せ、kintoneは給与計算などの事務所の業務に集中させる。
現在は、マスター系も含め108アプリを、20人で運用する。標準機能を軸に、デジタルタコグラフのCSVの取り込みなど、必要な部分だけをJavaScriptで補う。事務職員の紙のタイムシートは廃止し、本人がkintone上で直接打刻する。ドライバーの勤怠については、事務方がデジタルタコグラフから出力されるCSVをkintoneに直接取り込む。有給の取得や連勤管理などの情報を補う「出勤簿」アプリと組み合わせ、給与集計アプリに自動で反映する。雇用形態ごとに異なる計算式は、kintoneの計算フィールドに集約し、給与計算まわりの作業が、月140時間以上減った。誤って数式を書き換えるリスクもなくなった。歩合給は、運行管理システムからデータを取り込み、ボタン一つで自動計算し、確認を含めて約10分で終わる。ドライバーの要望を受け、手当の内訳のPDFを一括で作り、各従業員のメールに自動で送る機能も実装した。燃料費の集計も、石油会社ごとに異なる請求書のCSVから、燃料代を仕分け、グループ会社と按分する処理を、自動化した。
現場の負担を抑えるため、段階的にデジタル化を進める。電話で対応しながら記録する定時連絡や夜勤の動態管理は、今も紙で運用し、配車表はExcelの運用を続けながら、データをkintoneに取り込む。人事評価の目標にも、kintoneの活用を推奨する項目を組み込んだ。使いづらいという声は、ほぼ聞かれなくなった。今後は、準備中の事故報告アプリを本格的に運用する予定だ。燃費管理についても、現在のExcelによる集計をkintoneに統合し、個人別の燃費分析につなげたい考えだ。