セイコーエプソンは、Quollio Technologiesのデータインテリジェンスプラットフォーム「Quollio Data Intelligence Cloud(QDIC)」を、グループ統合データ基盤のメタデータ管理に使い、データの意味を、人とAIの双方が理解できる「データの意味基盤」の構築に取り組んでいる。QDICは2025年10月に本格稼働した。10月16日、Quollioが発表した。
エプソンは、世界各地に分散するデータを統合し、活用する「グループ統合DB」の構築を、2018年から進める。2019年には、グローバル規模の業務変革プロジェクトが始動し、「活用すべき全データを一箇所に集約する」というコンセプトで、全社的なデータマネジメントを進めてきた。長期ビジョン「ENGINEERED FUTURE 2035」の達成に向けた、事業構造の改革と経営基盤の強化を支える基盤だ。
ただ、データを集約しただけでは、全社的な活用が思うように進まなかった。課題は3つあった。1つ目は、グローバルデータの意味の不一致と属人化だ。似たデータでも構造が異なり、単位も統一されておらず、集める側の情報システム部門と、使う側の業務部門を横断して、データの意味を共有する仕組みがなかった。2つ目は、ビジネスメタデータの整備と定着の負荷だ。従来のデータカタログ製品は、整備する側も使いこなしにくく、業務部門からの情報収集に、想定以上の工数がかかった。3つ目は、テクニカルメタデータの収集と管理の負荷だ。自動収集の機能は、適用範囲を広げるにはコストが高く、一部を自社開発で補っていたが、対象システムが増えるにつれて、運用と保守の負荷が高まった。生成AIやAIエージェントの登場で、メタデータを使うのは人間だけではなくなると見込み、データの意味を組織全体で共有し、人とAIが正しく理解できる「データの意味基盤」が不可欠と判断して、メタデータ管理基盤の入れ替えを決めた。
専業ベンダーやクラウドベンダーを含む複数の製品を、操作性、機能性、運用性、価格で比べ、QDICを選んだ。理由は4つある。業務部門に寄り添う直感的な操作性、エンジニア向けの専門的な構造定義を前提とせず、AIが読みやすい形でメタデータを構造的に定義する考え方との一致、特定のプラットフォームに依存せず、さまざまなシステムを横断してデータの流れを把握できる第三者としての強み、迅速な開発対応と、きめ細かなサポート体制だ。
2025年7月の社内企画の承認から、わずか3カ月後の10月に、QDICの本格稼働を実現した。旧製品の契約期間の都合で、スケジュールはタイトだったが、Quollioの伴走支援のもと、計画を変えずに移行を終えた。QDIC上では、システム一覧からタグをクリックするだけで、関連するデータがまとまって表示される。「取引先情報」「従業員情報」など、社内で共通に使うマスタを、カテゴリやタグから確認でき、各マスタの参照元と、データ同士のつながり(データリネージ)も、図で把握できる。
経営管理・DX本部IT企画設計部の原田剛志部長は「今後、メタデータを使うのは人間だけではありません」と話す。これまでは、人間がBIツールで可視化していたが、今後は「AIエージェントから示唆を得る」形にしたい。ユーザーがやりたいことを入力すると、エージェントがメタデータにアクセスして業務を解釈し、DWHにクエリを発行してデータを取得する世界を目指す。
現在は、ビジネスメタデータの拡充と、社内への定着に向けた活動を本格化している。登録する情報には高い正確性が求められるため、一気に対象を広げず、「正解を確認できる領域」から整備して、品質を担保する方針だ。まず在庫領域で成功事例を作り、CRM、調達、固定費分析などの業務領域への展開を検討する。