スター精密は、静岡県菊川市に建設し2025年12月に稼働を開始した新工場「菊川南工場」に、工場の生産性改善システム「KOM-MICS」を導入した。5月18日、KOM-MICSを提供するクオリカが発表した。スマート工場運用の基盤として生産設備のデータ可視化と一元的な稼働監視環境を整え、生産性向上と環境負荷低減の両立を推進する。
スター精密は、精密部品加工に用いられるCNC自動旋盤を主力とする工作機械メーカーだ。同社では、コア部品の品質を維持しながら生産性を高め、コスト削減を進めるために生産設備のデジタルトランスフォーメーション(DX)を重要なテーマとして掲げてきた。従来から現場独自の手法で稼働状況の可視化は行っていたものの、主に稼働や停止の記録にとどまっており、さらなる改善やエネルギー削減を推進するための「加工中の状態データ」を活用した根拠の明確化が課題となっていた。
そこで同社は、複数のシステムを比較検討した結果、部品加工時のモーター負荷(切削抵抗)をリアルタイムに記録でき、設備内部の状況を詳細に把握できる点、割安なツールよりも初期から現場改善に直結する豊富なアプリケーションが標準搭載されている点を評価し、KOM-MICSを採用した。新工場への本格展開に先立ち、既存の「菊川北工場」のNC工作機械3台を対象に1年間の検証を実施。切削負荷を測定・分析して加工プログラムを最適化する「切削抵抗一定化」機能を活用した結果、品質や工具損傷のリスクを抑えつつ削る速度を上げることに成功し、年間合計940時間の加工時間短縮を達成した。
この検証成果を踏まえ、新工場の設備のうち約8割に相当する計54機の工作機械をKOM-MICSに接続した。これにより、メーカーごとに制御形式やデータ形式が異なる混在環境でありながら、工場全体の稼働状況を一元的に把握できる「あんどん表示」の環境を構築した。また、切削抵抗データをベースに新旧の工具特性を比較して工具選定を最適化したことで、年間約20万円の工具コスト削減効果も見込んでいる。
※※画像1※※
キャプション:KOM-MICS導入イメージ
さらに、検証環境ではオプションの電力センサーを接続し、設備ごとの電力量を把握できるようにした。加工時間の短縮に伴う電力使用量の変化を定量的に確認する取り組みで、工作機械3台において年間1080kWhの削減が確認された。これにより、生産性の変化に加え、電力使用量や二酸化炭素排出量への影響も把握可能となった。プロジェクト途中には体制変更に伴う調整もあったが、クオリカが定例会の実施や個別対応を行い、導入を進めた。
スター精密機械事業部生産技術室の木村友亮室長は、一般的な稼働監視ツールが稼働状況の把握にとどまるのに対し、KOM-MICSでは切削抵抗の把握が可能であり、「設備内部の状態を把握したいというニーズに合致していた」と述べている。また、同室の橋爪優太氏は、取得データを基に改善検討を進められる点に言及した。今後については、加工時間短縮の取り組みを他設備へ展開するほか、グループ内や海外拠点での活用も検討している。