オリックスは、生成AIを活用したビジネス文書管理サービス「PATPOST」の事業成長を目的に、オブザーバビリティプラットフォーム「New Relic」を採用した。1月21日、New Relicが発表した。顧客の利用状況をリアルタイムで可視化することで、トラブル解決のスピードを従来の2倍以上に高めたほか、システム障害の原因特定に要する時間を1分程度にまで短縮した。今後は得られた観測データを製品の改善や営業活動の最適化に活用し、SaaSビジネスのさらなる成長を目指す。
オリックスは、多角的な事業展開の一環として、法人営業本部内のデジタル戦略推進室を中心にデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進している。同室が提供する「PATPOST」は、生成AIを活用して多様な文書の読み取りや管理を行うクラウドサービスだ。2023年5月のリリース以降、電子帳簿保存法への対応などを背景に、中堅・中小企業を中心に導入が急増。2025年11月時点で顧客数は2000社を突破した。
同サービスでは、最小限の機能でリリースし、ユーザーの反応を見ながら改善を繰り返す「MVP」戦略を採用している。従来、ユーザーの利用状況は直接のヒアリングで収集していたが、顧客数の急速な拡大に伴い、人手による把握が困難になっていた。そこで、アプリケーションの挙動やユーザー体験をリアルタイムで可視化し、客観的なデータに基づいてサービスを改善できるオブザーバビリティ環境の構築を決めた。
New Relicの採用にあたり、ユーザー数ベースの料金体系がサービスの運用形態に合致していた点に加え、導入時のオンボーディングから活用フェーズに至るまでの充実した支援体制を評価した。単なる障害対応ツールとしてではなく、事業成長のためのデータプラットフォームとして全社で活用するビジョンに合意したことが決め手となった。プロジェクトは2024年9月に始動し、約半年の試験運用を経て2025年5月から本格的な運用を開始している。
New Relicの導入により、カスタマーサポート業務ではトラブル解決のスピードが向上した。従来、エラー発生時の問い合わせ対応ではエンジニアへの確認が必要で、解決まで平均20分から30分を要していた。導入後はサポート担当者が自ら原因の切り分けを行えるようになり、解決時間は平均10分と半分以下に短縮された。また、個別のユーザーの利用状況を把握できるダッシュボードを活用することで、顧客が直面している課題を事前に察知し、より適切なアドバイスを提供できるようになった。
システム開発・運用の現場でも成果が出ている。New Relicによってシステム全体を網羅的に監視できるようになったことで、障害発生時の原因特定時間は、従来の平均15分から1分から2分程度へと短縮された。エンジニアは障害対応の負担から解放され、より本質的な開発業務に注力できる環境が整った。
営業・マーケティング領域では、データに基づいた戦略的なアプローチが可能になった。2025年4月に追加したAI新機能の利用動向を分析した結果、活用頻度の高い業種や利用形態が特定され、訴求すべきターゲットが明確になった。インサイドセールスにおいても、無料期間中のユーザーや既存顧客の利用状況を把握し、継続利用の提案やアップセル営業を効率的に進めている。
オリックス法人営業本部副本部長兼デジタル戦略推進室長の長澤拓馬氏は、New Relicの活用を通じて、オブザーバビリティがSaaSビジネスの売上拡大に欠かせない「要」の存在であると感じているという。オブザーバビリティを備えることで、顧客の声を目に見えるデータに変え、関係者全員がプロダクト価値の向上のため前進できると評価している。今後はPATPOST以外の製品や社内システムにも活用の幅を広げ、運用管理の効率化を図る方針だ。