デンソーは、自社開発アプリケーションの可視化と運用監視の高度化を目的に、オブザーバビリティプラットフォーム「New Relic」を採用した。2025年9月4日、New Relicが事例を公開した。クラウドへのリフト・シフトに伴うシステム環境の複雑化に対応し、パフォーマンス問題の原因特定時間を大幅に短縮した。今後はハイブリッド・マルチクラウド環境の統合監視を目指す方針だ。
デンソーは、世界およそ140社のグループ企業が利用するITインフラの整備と運用を担っている。基幹システムだけでも約3000 OSに及ぶ大規模な環境を維持することが最重要のミッションだ。従来、オンプレミス環境では「Zabbix」による死活監視やリソース監視を行い、クラウド環境では各プラットフォームの標準ツールを利用してきた。しかし、全社方針としてクラウドへの移行を加速させる中で、システムの分散化と複雑化が進み、従来の監視体制では対応が困難になることが懸念されていた。
そこで同社は、急激な環境変化に対応するための「モニタリングのモダン化」を掲げ、オブザーバビリティ技術の検証に着手した。製品選定にあたっては、クラウドネイティブな環境への適応力に加え、システムの遅延原因を速やかに可視化できる点を評価し、New Relicの採用を決めた。導入にあたっては、デンソーの長年にわたるITパートナーであるSCSKが伴走支援を行った。
New Relicの導入効果は、約2万ユーザーが利用する社内の「承認申請システム」のトラブルシューティングにおいて現れた。同システムでは特定の時間帯に遅延が発生し、業務に影響が出ていたが、既存の監視ツールでは原因の特定が困難だったという。New Relicのアプリケーションパフォーマンス監視(APM)機能を適用したところ、アプリケーションプロセス全体が可視化され、遅延の原因がフルガベージコレクションの発生であることを突き止めた。
従来、熟練エンジニアがログ解析に丸3日を要していた難易度の高い問題だったが、New Relicを活用することで、わずか3時間で原因を特定できた。エージェントを導入するだけで基本機能を利用でき、遅延の原因がクエリの問題なのかメモリリークなのかを容易に調査できる操作性の高さも、現場のエンジニアから高く評価されている。
料金体系についても、ユーザー数とデータ量に応じた体系であるため、少人数から始めて段階的に拡大しやすく、コストの見通しを立てやすい点がメリットになった。今後は、個別のアプリケーション開発チームにもNew Relicのライセンスを提供し、開発エンジニア自らが問題を検知・解決できる体制の構築を進める。また、外形監視機能を活用し、ブラックボックスの多いSaaSやPaaSの正常性確認にも役立てたい考えだ。
デンソー IT基盤推進部 ITサービス室長の木原祐二氏は、デジタルトランスフォーメーション(DX)銘柄2025への初選出に触れつつ、「先進テクノロジーの提供と基盤整備を通じて、経営戦略と一体化したデジタル変革をさらに加速させていく」としている。また、同部 ITサービス室サーバサービス2課長の嶋岡孝典氏は、「目標はあくまでシステムの分散化に適応するためのモダン化だ。その先には、オンプレミスとクラウドを意識せずに統合監視できる理想的な運用環境の構築を見据えている」と話している。