レッドブル・フォード・パワートレインズ(RBFPT)は、オラクルの「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」を採用し、2026年からのF1レースに投入する次世代ハイブリッドエンジンの開発に活用している。2023年9月22日、オラクルが発表した。
2026年以降のレースシーズンに向け、RBFPTはレッドブル・レーシングとスクーデリア・アルファタウリ(Scuderia AlphaTauri)のハイブリッドパワーユニットのサプライヤーとなる。F1は2026年から、100%サステナブルな燃料の使用を義務付けるなど、新たなレギュレーションが導入される。RBFPTでは、それに対応するハイブリッドエンジンをゼロから開発しており、その過程で複雑なシミュレーションのためにOCIを採用した。
OCIのベアメタル・コンピュートとクラスタ・ネットワーキングにより、RBFPTは、従来型のオンプレミス環境と比較して大規模なHPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング)ソリューションを低コスト、短期間で導入できた。OCIの処理能力の活用で、物理的なプロトタイプを製作する前に、デジタルシミュレーションを用いコンセプトを評価し設計を改良できる。
RBFPTは、OCI上でConvergent Scienceの「CONVERGE CFDソフトウェア」やSiemens Digital Industry Softwareの「Star CCM+」などの専門性の高いシミュレーションツールを活用している。特にOCIの標準、高性能シェイプは、CFD(数値流体力学)などのHPCタスクに適しており、新しいエンジンの燃焼室を迅速かつ効率的にモデリングできる。これにより、エンジニアリングチームは、より迅速にオプションを評価し、設計の改良も可能となった。また、リソースをスケールアップできるため、多数のエンジニアの採用など、チームの成長にも柔軟に対応できる。
レッドブル・レーシングのチーム代表兼CEOであるクリスチャン・ホーナー氏は、「2026年までに100%サステナブルな燃料を使用する競争力のあるパワーユニットを市場に投入します。そのために、我々のパワートレイン・チームは驚異的なスピードで作業を進めています。オラクルは最高のインフラストラクチャと、それを我々のプロセスと統合するための専門知識を提供してくれるため、パワートレイン開発を加速させるとともに今後の大きな課題にも対応できます」と述べている。
RBFPTは、2026年のF1シリーズでエンジン供給を行うわずか6メーカーのうちの1つで、過去の製品データの恩恵にあずかれない白紙状態から設計を開始した。 今後もRBFPTはOCIを活用し、デジタルシミュレーション主導で開発を進め、競争力の高い次世代ハイブリッドエンジンの開発を目指す。