法務省は、サイバートラストが提供するリモート署名基盤を導入し、商業登記電子証明書による電子署名をオンラインで行うシステムを構築する。9月3日、サイバートラストが発表した。商業登記電子証明書をスマートフォンで利用できるようにして操作性を改善し、利用者の利便性とセキュリティ向上を目指す。
法務省は、行政手続きの電子化を目的として、2000年から「商業登記に基づく電子認証制度」を運用し、法人向けの電子証明書を発行している。しかし、これまでのシステムは操作が複雑で、電子署名を行える環境が限られる課題があった。具体的には、利用者が自身の端末に証明書と秘密鍵をファイル形式で保管する必要があり、利用できるサービス環境も限定されていた。
こうした背景から、法務省は商業登記電子証明書を安全かつ利用者に配慮した操作性でオンライン利用できる仕組みとして、「商業登記電子認証ポータルシステム及びリモート署名システム」の導入を決めた。サイバートラストは、このシステムの設計、開発、運用業務の入札案件を落札した。同社が持つ国内最長の電子認証センターの運用実績や、クラウドと電子認証センターを組み合わせたハイブリッド構成の運用実績が評価された。
サイバートラストのリモート署名基盤の採用により、利用者はスマートフォンを使って、いつでもどこでも安全に電子署名ができるようになる。また、操作画面をユーザー視点で改善し、利便性を向上させる。リモート署名に必要な商業登記電子証明書と秘密鍵は、サイバートラストの電子認証センターの専用機器上で管理されるため、利用者の管理負荷軽減と漏洩リスク低減にもつながる。
新システムは2026年度中の運用開始を目指している。発行される商業登記電子証明書は、電子契約における法人代表者の本人確認や、法人から行政機関へのオンライン申請などで活用される。これにより、法人取引のデジタル化や行政手続きの効率化が期待されている。また、商業登記電子証明書とデジタル庁の共通認証システムである「GビズID」が連携し、事業者向けの共通インフラとして活用されることも見込まれている。