アイナックス稲本は、リブランディングを通じた企業イメージの刷新を目的に、Urthが提供するメタバース空間「metatell(メタテル)」を導入した。2月20日、Urthが発表した。バーチャル空間で自社の先進性や世界観を直感的に体験できる環境を構築したことで、難航していた人材採用が成功するなど、具体的な効果が出始めている。
アイナックス稲本は、業務用クリーニング機器の製造・販売を手掛けるパイオニア企業だ。現在は単なる機械メーカーの枠を超え、施設の設計から運営サポートまでを一貫して担う「トータルエンジニアリング企業」への変革を推進している。しかし、この新たな企業像は抽象度が高く、従来のWebサイトやSNSの発信だけでは、エンドユーザーや求職者に対して同社の真意や魅力を十分に届けきれない課題を抱えていた。特に、次世代人材へ訴求するためのブランディングにおいて、従来の手法では限界が生じていた。
こうした背景から、日本旅行の提案を受け、新たなコミュニケーション手法としてメタバースの導入を決めた。metatellを選定した理由として、建築デザイナーが設計する空間のクオリティの高さや、専用アプリが不要でブラウザから容易にアクセスできる利便性、同社の世界観を自由に表現できるカスタマイズ性の高さを挙げている。
空間の制作にあたっては、これからの時代を作る若い感性を重視し、若手社員にプロジェクトを一任する体制を敷いた。当初のコンセプト方針確認後はベテラン社員が口を出さない方針を貫いたことで、若手メンバーの主体性が向上し、質の高い空間が完成した。構築されたメタバース内では、単なる製品紹介にとどまらず、生産性向上や工場管理といった顧客の関心が高い領域のソリューションを自ら選択して発見できるエリアを設けるなど、同社が提供する「価値」を体感できる工夫を施した。
導入効果は多方面に現れている。一般公開に先駆けて実施した社内公開では、ほとんどの社員が空間を体験し、新方針の浸透に寄与した。社外向けでも、展示会での顧客から驚きや期待の声が寄せられたほか、最大の成果として採用難の解消が挙げられる。約1年以上にわたり難航していたプロモーション人材の採用において、メタバース公開後の募集で、先進的な取り組みに興味を持った実務経験者の採用が即座に決定した。
アイナックス稲本でプロジェクトを推進した橋本氏は、「メタバースは業界初の取り組みとして注目度が高く、世界観を深く体験してもらえる。今後は遊び心を加えた空間の公開や、メタバース内でのセミナー、会社説明会への活用など、さらに利用範囲を広げていきたい」としている。
今後は、2026年2月に入社の専門人材とともにメタバース活用の展開を加速させる。新製品の発表会やイベントの開催を通じて、デジタル空間での顧客接点を強化し、トータルエンジニアリング企業としてのブランド価値向上を目指す。