前橋市は、持続可能な公共交通の計画策定を目的に、定時定路線型交通とデマンド型交通を組み合わせた「総合交通シミュレーションシステム」を採用した。3月23日、同システムを開発した富士通が発表した。同市が公表した「前橋市地域公共交通計画」において、バス路線増便の方針を裏付ける科学的根拠として分析結果が活用されている。国内で両交通形態を組み合わせた総合的なシミュレーションが計画策定に採用されるのは初めてだ。
前橋市では、人口動態の変化や移動需要の多様化、さらには運転士不足といった深刻な課題に直面している。地域公共交通計画においてバス路線の最適な再編施策を検討するにあたり、客観的なデータに基づく有効な科学的根拠を必要としていた。
今回採用されたシステムは、国土交通省が推進する地域交通DX推進プロジェクト「COMmmmONS(コモンズ)」において富士通が受託開発したもの。2025年4月のプロジェクト選定を経て開発が進められ、シミュレーション結果の有用性が評価されたことで前橋市の計画への適用が決まった。
システムの核となるのは、実世界の経済や社会活動をデジタル上に再現する「ソーシャルデジタルツイン」技術だ。国勢調査などの統計データから地域特性を反映した住民データを生成する「合成人口技術」や、住民の属性や移動時間帯を踏まえて移動手段の選択特性を再現する「行動選択モデル」などを活用している。これにより、移動実績データが不足している場合でも、現実の移動状況に近い高精度な需要予測が可能になった。
導入の効果は、計画策定の効率化にも現れている。移動需要の予測から施策検討、結果の可視化までを一貫して行うことで、従来はコンサルティング会社への委託により1年から2年を要していた策定期間を短縮している。特に交通事業者などのステークホルダーとの合意形成に要する期間を約25%短縮できることを実証した。
また、デマンド交通の乗合率や施策全体の事業コストなど、多角的な評価指標を提供できる点も特長だ。交通手段の確保が難しい「交通空白」の解消に向け、利用者、事業者、地域全体の三者に与える影響を総合的に評価し、持続可能な地域交通の立案を支援する。
前橋市はこのシミュレーション結果を、令和8年度から12年度を計画期間とする地域公共交通計画の主要施策に反映させており、データに基づいた実効性の高い交通網の構築を進めていく。富士通は今後、同システムを2026年度中にサービス化し、全国の自治体や交通事業者が活用できる標準ツールとして展開する。