新東京病院は、救急車両の運用効率化と情報共有の迅速化を目的に、スマホ型動態管理・運行管理クラウドサービス「TCloud for SCM」を採用した。7月1日、同サービスの導入を支援した都築電気が発表した。主に物流業界で用いられるシステムを医療現場に応用したもので、車両の現在地や活動状況をリアルタイムに可視化することで、1出動あたり約10本の電話連絡削減や事務処理時間の短縮効果を得ている。
新東京病院は、千葉県松戸市に拠点を置く急性期病院である。松戸市の二次救急告示病院として24時間365日体制で重症患者を受け入れており、年間約5000件の救急搬送に対応している。同院の救急科では「断らない救急」を理念に掲げ、8名の救急救命士が3台の病院救急車やリフト車両を運用して年間約1000件の出動を担っている。
同院では、保有する救急車両の増強に伴い、情報連携のあり方が課題となっていた。従来のPHSや電話を用いた1対1の連絡方法では、搬送要経が重なった際に複数の現場状況をリアルタイムに把握することが難しく、関係者全員への個別連絡や手書きでの記録管理といった業務が負担となっていた。こうした中、救急科の担当者が都築電気の開催した物流向けシステムセミナーに参加したことを契機に、車両と人の動きをリアルタイムにつなぐ動態管理プラットフォームに着目し、医療現場への応用を模索して導入を決めた。
選定においては、医療現場固有の運用に合わせてシステムを柔軟に構築できる共創の姿勢や、スモールスタートが可能なミニマムな構成を評価した。実際の導入プロセスでは、現場の混乱を防ぎつつ納得いくまで検証できるよう手厚いフォローのもとでトライアルを実施。物流用語を「出動」「現場出発」「待機」といった医療の現場に即した言葉に置き換え、救急救命士に配備したスマートフォン8台とタブレット1台からボタン一つでステータスを登録できる環境を整えた。
2026年1月の本格稼働以降、情報の一元化と可視化によって成果が得られている。これまでグループへの連絡のために生じていた電話連絡が1出動あたり平均10本程度削減された。また、ボタン操作によりタイムスタンプ付きのデジタルデータとして各種時刻が自動記録されるようになり、報告書作成などの事務処理時間が1時間単位で削減された。記憶に頼る心理的負荷がなくなったことで、救命士が目の前の患者に集中できる環境が構築されたほか、写真やメッセージ機能を用いたバイタル情報のリアルタイム共有により院内との連携も円滑化した。さらに、先進的なシステム運用が救急救命士の採用活動において強力なアピール材料になるという副次効果も生まれている。
今回の取り組みは同院における医療DXの第一歩と位置づけられており、今後は電子カルテとの自動連携や夜間・休日の運用拡大を進める計画である。将来的には、地域の複数医療機関が参加する災害時の広域動態管理への応用も視野に入れ、地域医療へのさらなる貢献を目指していく。