三菱地所は、コンセッション運営やターミナル運営への参画を通じて携わる全国10空港で、路線誘致や利用促進に人流分析AI Agent「ミセシル」を活用している。空港利用の前後に人がどこから来て、どこへ向かうかを分析し、従来把握しにくかった需要エリアの発見や、エアラインへのプロモーション提案に生かしている。9月29日、GROWTH VERSEが事例情報を公開した。
三菱地所は2018年の高松空港への参画を皮切りに、富士山静岡空港と北海道内7空港のコンセッション運営に携わり、沖縄県宮古島市の下地島空港ではターミナル運営にも参画している。空港事業部は、現場の運営を担う各空港の運営会社を支援する立場だ。各空港の運営会社が自治体などと連携して行うエアライン営業に加え、空港グループとしても横断的に営業し、路線誘致や利用促進の機会を広げている。
ミセシルの前身サービスを使い始めたのは2021年ごろだ。コロナ禍で航空・観光需要の先行きが不透明ななか、将来の需要回復に備え、グループ空港の状況を客観的に把握できるデータを探した。着目したのは、空港利用者が来る前にどこで何をしていたか、到着後にどこへ向かったかという、空港を起点とした前後の行動だった。複数のサービスを比較し、ミセシルを選んだ。
選定理由は3点ある。空港は非航空系の収益が重要で、航空機を使わない地域の客も立ち寄る集客施設でもあるため、商業施設や集客施設の人流分析に強みがある点。空港ごとの課題や仮説に合わせ、レポートを柔軟にカスタマイズできる点。三菱地所グループ各社で活用の実績があり、評価が高かった点だ。独自のターゲットの定義やタグ付けができ、空港を起点とした地域間の移動や、旅客と非旅客(見送りや出迎え)の可視化にも役立った。
活用が広がったのは2024年ごろからだ。2023年ごろから各エアラインで運休路線の再開が進むなか、需要が戻っている地域の把握に使い、結果を復便協議の基礎資料にした。同一空港の時系列比較に加え、グループ以外の空港の利用者動向も分析できる。復便がほぼ終わった2024年以降は、コロナ前後での地域の需要変化の分析が、エアラインへの提案の説得力につながっている。
具体的な成果もある。関西エリアの各空港から関与空港に乗り入れる路線の商圏を分析し、従来見えていなかった未開拓のエリアを見つけた。そのエリアへのプロモーションをエアラインに提案し、利用者の獲得につながった。属性の分析では、空港全体では40〜50代が中心だが、LCC(格安航空会社)が発着する時間帯は20〜30代の割合が大きく増えることも分かった。空港到着後の移動実態は、空港発着バスの路線やダイヤの協議・提案にも生かせる。町丁目単位で来訪者の回遊パターンを分析する取り組みも始めている。
導入前は、データの収集先を探すところから始める必要があった。官公庁の統計や紙のアンケートなど、使いこなしにくいデータも多かった。導入後は、同じ条件で過去と比較できるデータを定常的に取得でき、分析の時間が短縮されて、提案の質も上がっている。
空港事業部マネージャーの室岡延寛氏は「今後は、AIによって、自分たちでは気づいていなかった需要変化や新たな路線機会、販促施策のヒントを見つけられるような活用へと進化させたい」と話している。