シードは、既存の「SAP ERP」を「RISE with SAP S/4HANA Cloud Private Edition(RISE with SAP)」へ移行し、2025年1月6日に本稼働した。SAPシステムの導入・運用支援を手掛けるソフテスと、RISE with SAPを提供するSAPジャパンが11月5日に発表した。今回の移行により、同社はグローバル市場でのさらなる成長を支える高可用性の基幹システムを確立し、システムの安定稼働と運用負荷の軽減を実現した。
シードは1957年創立の「眼」の総合専門メーカーとして、コンタクトレンズや関連商品の製造・販売を行っている。2024年4月から2027年3月の中期経営計画では、連結売上高500億円を目標に掲げ、グローバル市場での成長基盤の確保を目指している。
同社が長年利用してきたSAP ERPは、今後の継続利用に向け「SAP S/4HANA」への移行が急務だった。特に、システム停止を伴う移行作業は年末年始の限られた期間で確実に行う必要があり、将来の事業継続に備えた高可用性の確保も求められていた。
移行方式には、既存資産を最大限に活用できる「SAPコンバージョン」を採用した。移行先の選定では、オンプレミス版のSAP S/4HANAをAmazon Web Services上に構築することも検討したが、インフラ環境、データベース、SAPアプリケーションの運用管理までを包括的に提供するRISE with SAP S/4HANA Cloud(RISE with SAP)を採用した。RISE with SAPは、セキュリティパッチ適用やバージョンアップといった保守作業をSAP社が担うため、システムの安定性と可用性の向上が期待できる点が決め手となった。また、既存のSAP ERPからの移行を支援する各種ツールが提供される点も評価した。
同社は、RISE with SAPへのコンバージョンパートナーとして、SAPシステム導入・運用に豊富な実績を持つソフテスを選定した。プロジェクトは2023年10月に開始し、2024年8月には現場部門による検証を実施、年末年始に移行作業が行われた。
移行作業では、一部のアドオンプログラムでパフォーマンス低下が見られたが、ソフテスと調整して改善した。また、ソフテスからはAWS上の中間サーバを活用した外部システム連携の提案など、現場の視点に立ったサポートが提供された。シードの情報システム部 部長である佐藤一浩氏は、基幹システムのトラブルが事業や顧客に影響を与えるリスクを回避できるのがRISE with SAPであり、高可用性を実現できると説明している。
RISE with SAPへの移行により、事業継続を支える高可用性基盤が確立され、予定通りの本稼働と安定運用を実現した。システム監視の負荷軽減や自動的なバージョンアップなど、運用効率の向上も実現している。
今後は、月1回の定例会で改善点の議論や新機能の共有を行い、パフォーマンスの最適化や業務改善に向けた取り組みを継続する方針だ。佐藤氏は、RISE with SAPによる基幹システムを長く利用していくうえで、仕組みの理解に加え、業務を含めたプログラムの改善、アドオンをなくすなど、運用の工夫をさらに進めることで理想の基幹システムに近づくと考えている。